急性閉塞性水頭症を伴う傍鞍部腫瘍の治療

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タイトル別名
  • Treatment for parasellar lesions with acute obstructive hydrocephalus
  • キュウセイ ヘイソクセイ スイトウショウ オ トモナウ ボウ アンブ シュヨウ ノ チリョウ

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説明

<p> 下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫などの傍鞍部病変は,第3脳室に腫瘍が入り閉塞性水頭症を呈することがあり,急速な神経症状の悪化時には緊急水頭症治療を要する.急性水頭症治療と腫瘍摘出に関して,患者の状態や腫瘍の性質に基づき,あるいは,専門治療医や手術機器といった病院の緊急治療体制などの要素により戦略を検討する必要がある.急性閉塞性水頭症の治療を要した6例の傍鞍部腫瘍の症例を治療戦略別に報告する.2例の小児頭蓋咽頭腫症例では,緊急手術にて姑息的に水頭症を解除するため,閉塞部位の第3脳室内腫瘍部分摘出術を行い,数か月待機の後に根治的腫瘍摘出術を行った.第3脳室病変を伴う,成人頭蓋咽頭腫,乳児未熟奇形腫,下垂体腺腫の3例では,ドレナージやオンマイヤ—リザーバーによる,水頭症のみに対する緊急手術を行い,数日後に根治的腫瘍摘出術を行った.巨大下垂体腺腫の1例は徐々に増大し閉塞性水頭症が進行しており,緊急水頭症手術は行わずに早めの臨時経鼻手術にて一期的に水頭症治療と腫瘍根治手術を行った.小児頭蓋咽頭腫の場合は,急性水頭症の解除により,栄養状態の回復,体重の増加,頭蓋顔面の成長などがえられ,根治手術となる拡大経鼻手術まで数か月待機することができた.第3脳室へ進展する下垂体腺腫は,通常と異なり鞍隔膜を越えて頭蓋内に直接侵入しており,易出血性であることなど,手術の難易度が高い.また,部分摘出による水頭症の治療は出血の心配があり,下垂体腺腫では行わなかった.傍鞍部腫瘍で急性水頭症を呈することはまれであるが経験する.腫瘍の性質と全体の治療計画を考慮して適切な術式を選ぶことが重要である.</p>

収録刊行物

  • NEUROSURGICAL EMERGENCY

    NEUROSURGICAL EMERGENCY 27 (1), 66-71, 2022

    特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency

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