北太平洋産ミンククジラの胸鰭白斑形状~海域間差異と系群比較への応用の可能性~

  • 中村 玄
    東京海洋大学 海洋科学部 海洋環境学科 海洋環境学部門 鯨類学研究室 一般財団法人日本鯨類研究所
  • 門脇 一郎
    東京海洋大学 海洋科学部 海洋環境学科 海洋環境学部門 鯨類学研究室 株式会社メタウォーター
  • 永塚 翔佳
    東京海洋大学 海洋科学部 海洋環境学科 海洋環境学部門 鯨類学研究室 株式会社エクスモーション
  • 藤瀬 良弘
    一般財団法人日本鯨類研究所
  • 木白 俊哉
    独立行政法人水産総合研究センター国際水産資源研究所
  • 加藤 秀弘
    東京海洋大学 海洋科学部 海洋環境学科 海洋環境学部門 鯨類学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Variation in a color pattern of white patch on the flippers of North Pacific common minke whales: Potential application for their interoceanic difference.

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説明

本研究はミンククジラ Balaenopt eraacutorostrata 胸鰭における白斑形状が系群識別標識としての有用性の評価を目的として,北太平洋産個体の胸鰭白斑の成長に伴う変化や雌雄差,変異を詳細に分析するとともに,北大西洋産個体との予備的比較を行った。北太平洋産個体については第二期北西太平洋鯨類捕獲調査 (JARPNII) において日本沿岸域および沖合域で捕獲された240 個体(雄: 体長 3.70-8.16 m, n = 151, 雌: 体長 3.84-8.68 m, n = 89),北大西洋産個体については既報の写真 (n =13) を用いた。北太平洋産個体の胸鰭長に対する白斑長の相対値は成長依存的変化が認められなかったが,雄 (33.8%) は雌 (31.8%) に比べ相対値が大きく,雌雄差が認められた。 胸鰭に対する白斑面積比は成長に伴い減少し,雄は雌に比べ大きい傾向が認められた。北太平洋産個体の白斑長 (33.4%), 白斑の面積比 (38.8%) はともに北大西洋産個体 (白斑長: 40.7%, 面積比: 55.5%) に比べて有意に小さいことが示された。胸鰭基部における白黒境界線の形状は成長依存的変化,性差がなく,北太平洋産個体の全個体で蛇行型である一方,北大西洋産個体では直線型であった。胸鰭白斑は系群指標として有望であるだけでなく,ミンククジラの種分化過程の解明への貢献も期待される。

収録刊行物

  • La mer

    La mer 52 (3), 31-47, 2014-09-25

    日仏海洋学会

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