ミトコンドリアプロテオーム解析によるNAFLDの薬物性肝障害の解明
書誌事項
- タイトル別名
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- Proteomic analysis of NAFLD mice liver mitochondria following exposure to hepatotoxic drug
説明
<p>目的:ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)は、膜構造を変化させ膜間腔分子シトクロムcを始めとする様々なミトコンドリア構成成分を細胞内外へと放出し、炎症、細胞死など多様な生物学的現象を誘発する。これまで我々は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)マウスの肝ミトコンドリアにおいて、肝毒性薬物によってMPTが強く誘発され、ダメージ関連分子パターンとして自然免疫系で認識されるミトコンドリアDNAが放出されることを示した。本研究ではMPTで放出する分子を網羅的に同定し、互いの制御関係を加味した解析から、NAFLDミトコンドリアのMPTが起こす生体イベントを記述することを目的とした。</p><p>方法:肥満型糖尿病を併発するNAFLDモデルdb/db、非NAFLDのdb/+マウスを実験に用いた。肝臓から単離したミトコンドリアに対して、肝毒性およびMPT誘発能を持つ化合物トログリタゾンを実験のモデル薬物として処置し、ミトコンドリア上清のプロテオーム解析を行った。</p><p>結果・考察:同定された3500種以上のタンパク質のうち、少なくとも800種以上はミトコンドリア局在分子であることがわかった。さらに、MPTで変動した分子からネットワークを形成させ、関連するパスウェイ、イベントをランク付けした結果、NAFLDと非NAFLDに違いが見られ、特にNAFLDにおいてはsirtuin signaling, HSP90 signaling, autophagy-related protein signaling, mitochondrial dynamics, mTOR signaling, ROS signalingなどの関連が深いことがわかった。これより、NAFLDミトコンドリアはMPT感受性が高く、かつMPTが惹起するイベントもまた正常肝とは異なることが予測された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), P-210-, 2022
日本毒性学会