河川水に含まれる人為起源ガドリニウムの化学形態
書誌事項
- タイトル別名
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- Chemical forms of anthropogenic gadolinium in river water
抄録
<p> 近年,都市部を流れる河川水や内湾海水においてGd濃度の上昇が報告されているが,その原因として,MRIの造影剤として使用されているGdキレートが河川へと流入している可能性が指摘されている[1,2]。GdはCaとの拮抗作用を持つことから生体に対して毒性を持つと考えられており,河川流入後の周辺環境や人体への影響が懸念されている。我々の研究グループでは,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて,日本で使用されている6種全てのGd造影剤を分離・検出する手法の開発に成功している[3]。本研究では開発したHPLC-ICP-MS法を実際の河川水に適用し,Gdの化学形態分析を行った。</p><p> 河川水は武庫川(兵庫県)から採取した。採水は,下水処理場の排水口直下(排水試料)と,そこから0.5 kmほど上流側(上流試料),及び2 kmほど下流側(下流試料)の3か所で行った。排水試料では,希土類元素パターンにおけるGd存在度の正異常が認められた。この試料についてHPLC-ICP-MSによるGd化学形態分析を行った結果,3種のGd造影剤が検出された。検出された造影剤のGd濃度は,人為起源Gdの約70 %を占めていた。また,Gd造影剤は下流試料で濃度が有意に低下しており,上流試料では検出されなかった。これらの結果は,MRIの造影剤として使用されているGdキレートが下水処理場を通って河川へと流入していることを示している。</p><p></p><p>[1] Bau and Dulski, Earth Planet. Sci. Lett., (1996). [2] Inoue et al., Mar. Pollut. Bull. (2020). [3] Okabayashi et al., Talanta, (2021).</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), S28-1-, 2022
日本毒性学会