動物モデルを用いた心理社会的ストレスと痛みの科学的理解へのアプローチ

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タイトル別名
  • Combined Experimental Paradigm of Psychosocial Stress and Pain in Animal Models

抄録

<p>痛みは身体的要因のみならず社会的要因や精神的要因が互いに複雑に影響し合っている.げっ歯類を用いた基礎研究の積み重ねは,疼痛病態形成機序概念における身体的要因に関する理解を進歩させ,さまざまな医薬品開発に貢献してきた.しかし,人類にとって重要な精神活動や心理社会的環境と疼痛の相互作用メカニズムに関しては,より複雑な基礎実験の構築が必要であり,いまだ明確な研究スキームがないため,日々新たなアプローチが試みられている.</p><p>われわれは慢性疼痛病態モデルと社会的敗北ストレスモデルを組み合わせた新規実験プロトコルを考案し,実験動物の侵害受容閾値を指標として慢性疼痛へのストレス負荷の影響を検討した.その結果,社会的敗北ストレス負荷によって疼痛病態再発がみられることを見い出し,心理社会的因子による機械的侵害受容機構への影響に関して,基礎研究からのアプローチ手段を得た.このモデル実験系を用いることで,社会的敗北ストレス負荷が末梢血中の炎症性サイトカインの発現量の増加を引き起こし,炎症性物質の投与のみでも疼痛の再発が引き起こされることを見い出し,ストレス負荷後による全身性の炎症応答が,痛みの発現に関与することが示唆された.また,疼痛の再発と相関して脊髄ミクログリア活性化レベルの再増加が見い出されたことから,ストレス負荷による炎症応答と相関したミクログリアの再活性化が慢性疼痛病態の調節にかかわることが示唆されている.</p>

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 62 (5), 385-389, 2022

    一般社団法人 日本心身医学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390856218602606080
  • DOI
    10.15064/jjpm.62.5_385
  • ISSN
    21895996
    03850307
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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