安懐南の4つの短編の翻訳と解題

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス
  • 波田野 節子
    新潟県立大学 : 名誉教授 九州大学韓国研究センター : 学術共同研究員

書誌事項

タイトル別名
  • Translations of four short stories by An Hoe-nam, with an exegesis
  • アンカイミナミ ノ 4ツ ノ タンペン ノ ホンヤク ト カイダイ

この論文をさがす

抄録

本稿は朝鮮の作家安懐南(アネナム)の小説集『火』(乙酉文化社 1947)に収録された「鉄鎖、絶たれる(鐵鎖 끊어지다)」「島(섬)」「馬(말)」「火(불)」の4つの短編を翻訳して、解題をつけたものである。安懐南は1909年にソウルで生まれ、1931年に登壇して日本の私小説に似た「身辺小説」で主として都市の小市民的な生活を描いた。1944年9月に彼は徴用されて九州佐賀県の立川(たつがわ)鉱山に行った。34歳の中堅作家だった彼がなぜ徴用されたのかは不明だが、破産して財政的に困窮していたことと関わりがあるのではないかと推測される。彼は炭坑で働いたのではなく、朝鮮人労働者を管理する事務所に勤務したようである。1945年8月に日本が敗戦すると9月末に帰国し、徴用体験を素材にした短編を精力的に執筆して、1947年に小説集『火』を出版した。日本の敗戦後に満洲、中国、日本からの帰国について書かれた小説は韓国で帰還小説と呼ばれているが、『火』もその一つである。その後、安懐南はいくつかの作品を発表して左翼の評論家から高い評価を受ける。そして朝鮮半島が分断された1948年に家族や仲間たちと一緒に38度線を越えて北に行った。朝鮮戦争終結後、南から行った作家の多くは粛清されたが安懐南は粛清されなかった。だが、その後の行跡は知られていない。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ