チベット大蔵経所収の五護陀羅尼注釈について

  • 園田 沙弥佳
    Visiting Researcher, Institute of Oriental Studies, Toyo University, Ph.D.

書誌事項

タイトル別名
  • The Commentaries on Pañcarakṣā in the Tibetan Tripitaka
  • The Commentaries on Pancaraksa in the Tibetan Tripitaka

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説明

<p> インド密教における五護陀羅尼とは,『大護明陀羅尼』を含む5種の初期密教経典の集成である.本論文ではチベット大蔵経に含まれる『大護明陀羅尼』の注釈書『大秘密真言随持経十萬註』の内容構成を中心に取り上げ,サンスクリット系統とチベット語訳系統の『大護明陀羅尼』,および,ヴァイシャーリー疫病消除説話(『根本説一切有部律』「薬事」,『ヴァイシャーリー・プラヴェーシャ』)を相互に比較検討した.『大護明陀羅尼』の注釈書は9つの章に分かれており,そのうち2つの章題には『ヴァイシャーリー・プラヴェーシャ』の経題が含まれている.注釈書の内容と各経典を比較した際の主な相違点に関しては,世尊がヴァイシャーリーに向かう直前に滞在していた場所があげられる.注釈書では,「薬事」と『ヴァイシャーリー・プラヴェーシャ』の記述と同様,「ナーディカーのクンジカ堂」が示されている一方,サンスクリット系統の『大護明陀羅尼』ではラージャグリハに住していたと記されており,チベット語訳系統の『大護明陀羅尼』よりもむしろ「薬事」や『ヴァイシャーリー・プラヴェーシャ』の記述と近しい例が見られた.注釈書が制作された頃の『大護明陀羅尼』の内容は,『根本説一切有部律』や『ヴァイシャーリー・プラヴェーシャ』の影響を受けていたことが推察される.</p><p> 五護陀羅尼経典の一つである『大寒林陀羅尼』もまた2つの系統が存在し,その注釈書も2系統の経典の内容が含まれている.この点は今回取り上げた『大護明陀羅尼』の注釈書と同様である.五護陀羅尼に関連する2つの経典は,チベット大蔵経で個別に収録されているにもかかわらず,1つの注釈書の中で解説されている.</p>

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