<i>Nyāyabindu</i>およびその註釈書における論証式に関する術語の検討

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タイトル別名
  • Technical Terms Relating to <i>prayoga</i> in the <i>Nyāyabindu</i> and Its Commentaries
  • Technical Terms Relating to prayoga in the Nyayabindu and Its Commentaries

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抄録

<p> Nyāyabindu(NB)第三章の冒頭では,他者のための推論(parārthānumāna)の定義と論証式の大分類が説かれ,NB 3.33に至るまでprayogaセクションが展開される.このうち,本稿が取り扱うのはNB 3.1-7における他者のための推理の定義セクションである.これまで,ダルマキールティの論証式そのものを主題とする研究はほとんど行われなかったが,稲見2018によって,ディグナーガからの変遷をも含むダルマキールティの論証式の特徴が明らかにされた.その一方で,NB 3.8-25で例示される論証式の下位分類について,詳細な研究はまだ行われていない.本稿では,論証式に関する基礎的な語としてā-khyā (= pra-kāś), abhidheya, gamyamānaという三つの語に着目する.ダルモーッタラのNyāyabinduṭīkā,ドゥルヴェーカミシュラのDharmottarapradīpaにもとづき,それぞれの語の意味を明らかにすることによって,論証式の構成要素やそれに関わる下位概念の理解に繋げることを目指す.</p><p> 他者のための推論の定義(NB 3.1: trirūpaliṅgākhyānaṃ parārtham anumānam)で用いられる「表示する」(ā-khyā)という動詞は,ダルモーッタラによって「顕示する」(pra-kāś)と言い換えられる.ドゥルヴェーカミシュラによれば,論証式によって顕示されるもの(prakāśya)には,直接的に表示されるもの(abhidheya)とgamyamāna(間接的に理解されるもの)とが含まれる.まず,直接的に表示されるものは,論証式の大分類に応じて二種ある.すなわち,〈同じ属性をもつこと〉を有する論証式(sādharmyavat)では肯定的随伴(anvaya)と主題所属性(pakṣadharmatā)が,〈異なる属性をもつこと〉を有する論証式(vaidharmyavat)では否定的随伴(vyatireka)と主題所属性がそれぞれ直接的に表示される.そして,前者では否定的随伴,後者では肯定的随伴が間接的に理解される.</p><p> 一方,顕示されるものはいずれの論証式においても同一であり,それは三つの特質をもつ論証因にほかならない.この顕示されるものをめぐる議論の中で,ダルモーッタラは顕示されるもの(prakāśya)とgamyamānaとを同義語とみなし,gamyamānaの中に直接的に表示されるものとsāmarthyagamya(間接的に理解されるもの)を含めた.前述のように,ドゥルヴェーカミシュラはgamyamānaについて間接的理解を意味する語として解釈していたが,ダルモーッタラの理解を承け,直接的に表示されるものとsāmarthyaprakāśya(間接的に顕示されるもの)をまとめた概念としてgamyamānaを解釈しなおした.</p>

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