静岡市立芹沢銈介美術館所蔵「開皇十八年銘金銅菩薩立像」

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  • Items of interest from the collection of Serizawa Keisuke A small, gilt bronze statue of Buddha from the Sui Dynasty of China Serizawa Keisuke Art Museum, Shizuoka, Japan

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抄録

芹沢銈介によって収集され、現在、静岡市立芹沢銈介美術館の所蔵となっている金銅菩薩立像は、台座に「開皇十八年十月」の紀年銘を有している。開皇は中国隋代に用いられた年号で、西暦598年に相当する。この年が本像の制作あるいは供養の時期とみられるが、造形的には500年前後の北魏後期の仏像様式に、その源流が求められる。北魏後期の仏像には、縦長の頭部、肉づきの少ない平板な体躯、中国風の着衣、正面観を重視する左右相称の衣文などの共通性がみられ、洛陽様式とも呼ばれている。開皇十八年銘像は、かなり省略されているものの、これらの特徴を備えており、洛陽様式を継承して造られたことがわかる。北魏の滅亡後、中国華北では東魏・西魏、北斉・北周と短命な王朝が続くが、金銅仏の様式は石仏や白玉仏に比べて保守的傾向が強く、洛陽様式は形式化の道を辿りつつ引き継がれていった。北周による廃仏は華北一帯に多くの被害をもたらしたが、その後に中国を統一した隋は、積極的な仏教復興事業を行い、開皇年間頃には古仏の修復も多数行われたという。こう した時代背景の中、開皇十八年銘像は、前代の仏像様式を踏襲して造られたとみられる。本像は、古様を示すのみならず、力のこもった表情とおおらかな線刻の調和に造形の妙がある。

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