地域活性化の研究と実践

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Research and Practice for Regional Revitalization
  • Touchpoint between Region-based Business School and Geography
  • 地域密着型ビジネススクールと地理学の接点

抄録

<p>1.シンポジウムの背景と目的 </p><p> 少子高齢化・人口減の進行や,長引く不況による地域経済の停滞の中で,地域の個性を生かした地方創生が日本各地で取り組まれており,地理学の知見が地域活性化に活用される機会が増え,また期待される状況にある.地理学は様々な要素が相互に影響し合う地域というフィールドを対象とした多面的で総合的なアプローチを特色とし,理論と実践が密接に結びついている(ハバードほか 2018). 香川大学大学院地域マネジメント研究科(香川大学ビジネススクール)は2004年に設立され,地域に焦点をあてたユニークな特徴を持つ経営系専門職大学院である.1学年の定員が30名で約8割が昼間に仕事を持つ社会人学生であり,現在の職場への応用,新規事業や起業など学びを実践に活かそうとする志向性が強い.MBA課程の総決算として2年次に修士論文に替わるプロジェクト研究が必修であり,企業経営関連だけでなく地域に関係し地理学的な要素を含むテーマも多く取り組まれている. 本シンポジウムは,香川大学大学院地域マネジメント研究科におけるプロジェクト研究を発表する機会を日本地理学会において提供し,地域に対する志向性を共有する地理学と地域密着型ビジネススクールが交流することを通じて,地理学の研究を地域の問題解決という実践につなげるポイントを探り,また地域のための研究と実践の望ましい関係のあり方について検討することを目的とする. </p><p></p><p>2.地理学と実践 </p><p> 地理学と実践の論点は従来,地理教育や(岩田1994;山口他2011;山本 2014),地域政策などの文脈で論じられてきた(伊藤,1998). 田中(2020)による学史・方法論の年間学界展望では本文中で8回実践という語が登場し,近年の地理学における実践への高まりを示している.梶田(2014)はアメリカを中心とする応用地理学研究をレビューし,応用地理学の実践ガイドラインをめぐるパショーンとジョンストンの論争を紹介するとともに,応用地理学者や中堅実務家と「純粋」地理学者あるいは学会の中心的地理学者との乖離の問題が存在し,両者が共に仕事をすることでもたらされる副産物の機会を失っていると指摘している.本シンポジウムは中堅実務家と地理学者が共同する機会を提供するという意義を持っていると言える.</p><p></p><p>3.研究と実践  </p><p> 実践と密接に関係した研究方法にレヴィンが体系化したアクションリサーチがある.中村(2008)はアクションリサーチにおける研究者のポジションを1)内部者(研究者が自分自身/自らの実践を研究),2)他の内部者と協働する内部者,3)外部者と協働する内部者,4)相互的協働,5)内部者と協働する外部者,6)内部者を研究する外部者の6つに整理している. 社会人が大学院で学ぶ際の研究と実践のつながりとして,第一に研究のテーマや目的の選定および仮説の設定が,これまでの仕事での実践経験を活かして行われる,ないしは研究成果を自分や自分の所属組織が活かすことを念頭に行われる点,第二に研究者の属する組織や研究者自身が研究対象となり得る点,第三に研究結果を踏まえて大学院修了後に自らが実践する,あるいは地域に働きかける実践を行い,実社会での検証を行う点が指摘できる(表1).地域に関わるテーマの場合,指導の中で地理学の専門知識が活用される.本シンポジウムでは在学時や修了後に行われた地域に関係する研究を報告し,ディスカッションを通して研究と実践の適切な関係のあり方を探求したい.</p><p></p><p>文献 </p><p>梶田 真 2014. 地理学において 「純粋理論」 と 「実践・応用」 とは乖離しているのだろうか―1970 年代以降のアメリカを中心とする応用地理学の展開を糸口として―. 人文地理, 66(5), 423-442. </p><p>田中和子 2020. 2019 年学界展望 学史・方法論. 人文地理, 72(3), 215-218. </p><p>中村和彦 2008. アクションリサーチとは何か. 人間関係研究, 7, 1-25. </p><p>ハバード,F.・キチン,R.・バートレイ,B.・フラー,D.著,山本正三・菅野峰明訳 2018.『現代人文地理学の理論と実践―世界を読み解く地理学的思考―』明石書店.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390856594643517824
  • DOI
    10.14866/ajg.2022a.0_130
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ