鉄欠乏性貧血と新規治療薬剤の登場

  • 生田 克哉
    北海道赤十字血液センター 事業推進統括部 日本赤十字社血液事業本部 技術部 旭川医科大学

書誌事項

タイトル別名
  • Iron deficiency anemia and newly available iron preparations
  • テツ ケツボウセイ ヒンケツ ト シンキ チリョウ ヤクザイ ノ トウジョウ

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抄録

<p>生体には鉄を体外に能動的に排泄する機構が存在せず,吸収もこれに見合う量しか行われておらず,「半閉鎖的回路」を形成している。しかし,何らかの出血が続くと,赤血球造血に必要な鉄が不足し,鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia, IDA)が生じる。IDAは日常診療で遭遇する貧血の約7割を占め,根本的には上下部消化管内視鏡検査や婦人科的検索によって出血源を見つけ処置をする必要があるが,近年は小腸の観察や処置も広く行われるようになってきた。また,当然,鉄補充も重要であるが,経口鉄剤は消化器症状の発生頻度が高く,長期投与が難しい場合も多い。近年登場した経口鉄剤のクエン酸第二鉄は,嘔気・嘔吐が少ないと報告され,今後の臨床で期待される。一方,本邦では長い間,使用可能な静注用鉄剤は含糖酸化鉄1剤のみであったが,近年カルボキシマルトース第二鉄が使用可能になった。1回500 mg投与で,少ない投与回数でも確実に鉄が補えるため,こちらも今後の臨床で期待される。</p>

収録刊行物

  • 臨床血液

    臨床血液 63 (9), 1026-1034, 2022

    一般社団法人 日本血液学会

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