金華山のニホンザル個体群における「集まり方」の群れ間変異

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  • Inter-troop variation in clustering in Kinkazan population of Japanese macaques

抄録

<p>ニホンザル(Macaca fuscata)は母系で凝集性の高い複雄複雌群を形成する。その社会構造はメスと少数の高順位オスによる中心部と、低順位オスが付置する周辺部からなる同心円二重構造としてモデル化されてきた。金華山に生息する6群のうちサイズが最大と推定されるD群は、島内の他群に比べ「集まりが悪い」可能性がある。本研究は①D群メスの凝集性をA群のそれと比較し、②D群内外のオスの他個体との関わり方を、C2群を対象とする先行研究の結果と比較することで、D群の「集まり方」の特徴を定量的に評価する。D群の調査は2021年6~12月、断続的に計41日間行い、D群内外のオス14、メス11個体を対象に個体追跡を行った。出席簿を用いてD群の各メスの出席率を算出し、出席率が比較的高い5個体について2個体間の共存率を算出した。A群で収集された同様のデータを用いてD群とA群メスの出席率、共存率を比較することで凝集性を評価した。D群内外で観察されたオスのうち十分なデータが得られた8個体について、両性との視界内出会い率、視界内個体数、近接割合を算出し、これらの変数を用いて主成分分析(PCA)・クラスター分析を用いて、オスをカテゴリー化した。D群オスと先行研究によるC2群オスのカテゴリーとを比較した。D群とA群メスの出席率には有意な差は見出されなかったが凝集性はD群メス間の方が低い傾向が見いだされた。D群内外のオスは群れオスと3つの異なる群れ外オスのクラスターに分類され、D群内外のオスのカテゴリーはより多様であることが示唆された。同じ島内に生息する同一個体群であっても群れによって凝集性が異なる可能性が示唆された。メスの低い凝集性とオスのカテゴリーの多様性との相互作用が集まり方の相違を生んでいる可能性がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390856616523751680
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_52
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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