ニホンザルの出没距離の性・年齢クラスによる違い:個体の採食戦略からの検討

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タイトル別名
  • Differences in invasion distances at farmland among age-sex classes of Japanese macaques; viewed from individual foraging strategy-

抄録

<p>現在、多くのニホンザルMacaca fuscataの群れにとって、農地は、森林同様、重要な採食場所となっている。農地は、森林よりも栄養価の高い食物が存在するが、ヒトやイヌに追いかけられても避難場所が無いなど、それを得るためのリスクが大きい場所でもある。また、観察者にとっては見通しが良く、良好な観察条件が得られる場所であり、森林中よりもニホンザルの採食行動の特性がより明瞭に把握できる可能性がある。そこで、農地に出没したニホンザルの行動の内、出没の頻度、林縁から離れる距離の性・年齢クラスによる違いを明らかにし、個体の採食戦略という点から検討した。2021年10月から12月にかけて、石川県白山市に生息する約48頭からなるクロダニA群を対象に調査を行った。林外に出没した個体を対象にスキャンサンプリングを行い、性・年齢クラス、出没距離、活動、採食物などを記録した。群れの出没を最初から最後まで観察できた39回の出没の約90%において、群れサイズの20%以下にあたる10頭以下しか出没しなかった。出没個体は、イネの二番穂、草本、カキノキの果実を主に採食した。フィッシャーの正確確率検定では、出没個体の構成は、群れの性・年齢クラスの構成とは有意に異なった。また、性・年齢クラス間の出没距離の違いをSteel-Dwassの多重比較によって検討した結果、ワカモノオスとその他の性・年齢クラスが有意に異なった。以上の結果をもとに、性・年齢クラスごとに出没距離の長短と出没頻度について類型化すると、出没頻度が低く出没距離が短い(アカンボウ、子持ちのメス)、出没頻度、出没距離が中程度(オトナオス、ワカモノメス、1~2才)、出没頻度が中程度で出没距離が長い(ワカモノオス)、出没頻度が高く、出没距離が中程度(オトナメス、3~4才)といった4つのカテゴリーになった。この類型には、エネルギー要求とリスク感受性の違いなどが関係すると考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390856616523785216
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_21
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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