ニホンザルの種子散布特性の地域間比較

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タイトル別名
  • Regional comparison of seed dispersal characteristics of Japanese macaques

抄録

<p>ニホンザル (Macaca fuscata) は、わが国の森林生態系における主要な種子散布者のひとつだが、その分布域の広さにも関わらず、彼らの種子散布特性の地域変異に関する知見は得られていない。我々は、自らの野外調査と文献調査により13地域のサルの種子散布特性を収集して、1)糞からの種子の出現割合、2)出現した種子植物の種数、3)糞一個当たりの種子数、4)糞一個当たりの種多様度、5)種子の健全率を地域間で比較した。とくに、植生タイプ(落葉広葉樹林/常緑広葉樹林)と餌付けの程度(純野生/加害群/餌付け)の影響を評価した。全体で53科・147種の植物の種子を確認したが、5つ以上の調査地で共通して確認された樹種は10種で、とくにサルナシ属 (Actinidia sp.)、サクラ属 (Cerasus sp.)、イチゴ属 (Rubus sp.) は多くの地域で出現した。種子の出現率、糞一個あたりの種多様度は夏・秋に高かった。暖温帯地域で得られた種子は、冷温帯地域よりも高木類の割合が高く、また糞から種子が得られる期間が長かった。また、餌付けされた群れでは糞一個当たりの種多様度が低かった。これは、2つの森林タイプ間の植生や人為的な食物への依存性の違いに起因すると考えられた。いっぽう種子サイズ、糞当たりの種数、および種子の健全率は生息地全体で安定しており、これはサルが一度に処理する食物量の制限に起因すると考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390856616523786752
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_41
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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