ニホンザルにおける歯のマイクロウェアと食性の相関性:地域個体群間の違いについて

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  • Correlation between dental microwear and diet in Japanese macaques

抄録

<p>ニホンザルに限らず、ほとんどの動物の歯のエナメル質表面に残るマイクロウェアは、その個体が生前に摂食した食物を咀嚼した際に付けられたものである。本研究では、ニホンザルの大臼歯の咬合面に残っている微細な咬耗痕(マイクロウェア)の形状や深度などを工業用の共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析し、ニホンザルの地域個体群間の食性の違いとの相関性を検討した。歯の咬合面のマイクロウェアはミクロン単位の大きさであるため、長い間、走査形電子顕微鏡(SEM)の2次元画像データとしての解析しかできなかった。しかし、近年では咬合面の微細な凹凸等の特徴を数値化する手法(DMTA: Dental Microwear Texture Analysis)が開発され、従来の手法で問題となっていた観察者間誤差を最小にとどめ、傷の形状だけでなく深度による解析も可能となっている。本研究では、DMTAを用いて食性について既に詳しい調査が行われているニホンザルの地域個体群におけるマイクロウェアの形状を統計的に解析し、個体群間の違いと食性との相関性を検討した。具体的には、下北、金華山、栃木、房総、幸島、屋久島の6集団における死亡個体の上顎第2大臼歯のエナメル質咬合面のマイクロウェアを計測し、工業用基準であるパラメータを元にデータ化した上で、各個体群における生前の定量データとの相関関係を統計的に検討した。その結果、各個体群における食性の傾向と各パラメータの値には強い相関性がみられた。葉や茎など「丈夫」な物性の食物を多く採食する個体群では咬合面が比較的平坦な表面形状を示したのに対し、堅果や種子など「硬い」食物の消費割合が高い個体群では、起伏の激しい咬合面形状を示すことが明らかになった。ニホンザルの大臼歯のマイクロウェアの形状は、生前の食性を強く反映していると考えられる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390856616523790336
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_73
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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