災害急性期における薬剤管理と看護

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抄録

<p>皆さんは「災害関連死」という言葉をご存じでしょうか?災害が発生した際に、倒壊した建物の下敷きや火災等によって直接的な被害を受けて死亡する「直接 死」と災害による直接的な被害からは逃れたが、車中泊や避難所生活など慣れない環境に身を置くことによって生じる病気や持病の悪化等によって死亡する「関 連死」の 2 つに大別されます。 </p><p> 災害関連死は『当該災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的 負担による疾病により死亡し、災害弔意金の支給等に関する法律(昭和 48 年法律第 82 号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの』とされており、 各市町村が定めた基準によって認定されます。 </p><p> 例えば 2016 年 4月に発生した熊本地震では、直接死が 50人に対して、災害関 連死が 223人となっており(2022 年7月13日現在)、災害関連死が直接死を大きく 上回っています。また、そのうち70 歳以上の高齢者が 70%以上を占め、何かしら の既往症を持った住民が80%以上であったことが明らかとなっており、複数の脆 弱性を抱えた地域住民が災害による危機的状況から一時的に逃れたにも関わらず、その後の厳しい生活環境の中で死亡している現状があります。 </p><p> 令和 2 年 7月豪雨が発生した際に、私は NGO の看護師として発災当日に熊本県球磨村に入り、医療支援や避難所運営支援、物資支援等を実施しました。そ の際には、高血圧や糖尿病の薬が水に流されたことによって、数日に渡り内服薬を飲むことができていない住民が多数存在し、中には体調不良を訴える住民も いたため、緊急で対応を行ったケースもありました。また、普段内服している薬がない住民が多数いる状況をJ-SPEED 等のツールを活用しながら被災状況を「見 える化」し、必要な支援に繋げる活動も実施しました。 </p><p> この時の活動から災害が起きることによって平時から利用している薬剤が使用 できなくなることは災害関連死に繋がる危険があることについて身を以って体感し、平時から備えておくことの重要性や発災直後の急性期から被災した住民の 健康管理に関わっていくことの必要性を感じました。 </p><p> 今回は、災害時の支援の様子を交えながら災害急性期における薬剤管理を含 む生活支援の必要性についてお伝えできればと考えています。 </p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390856660872290688
  • DOI
    10.34597/npc.2022.2.0_s2-3
  • ISSN
    24358460
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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