タランテッラの音楽と舞踊の身体性─―ザンポーニャ奏者と踊り手の身体技法からみたタランテッラのリズムをめぐって─―
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- 金光 真理子
- 国立大学法人 横浜国立大学
書誌事項
- タイトル別名
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- The Embodied Rhythms of Musicians and Dancers in the Performance of Italian Tarantella
抄録
本稿は、イタリアの民俗舞踊「タランテッラ」、とくにルカーニア地方の「パストラーレ」を対象とし、パストラーレ特有のリズム感とそれを演奏する/踊る身体技法の関係を明らかにし、音楽と舞踊に共通する身体性を論じた。パストラーレの演奏にはイタリアのバグパイプであるザンポーニャが不可欠であることから、その楽器構造と音楽構造を整理した上で、ザンポーニャ奏者の身体動作と音楽のリズムの関係を考察した。その結果、ザンポーニャ奏者はチャンター管の指孔を「閉じる→開く」動作によってパストラーレの3分割リズム(♩ ♪)を演奏しているが、1)その身体感覚は指孔を「閉じる」一つの動作にあること、2)「閉じる」動作を強く長くすることで、ドローン音の効果が伴われ、強拍すなわち舞踊のビートを強調できること、3)「閉じる」動作のコントロールによって、3分割リズムと2分割リズムのあいだで自由に演奏できることが分かった。さらに、ステップの考察を通して、踊り手は「右足→左足」のステップで3分割リズムを踏んでいるが、1)その身体感覚は重心のかかった「右足」を踏み込む一つの動作にあること、2)「右足」を強く長く踏み込むことで強拍すなわち舞踊のビートを強調していること、3)「右足」を踏み込む長さと重さのコントロールによってステップを3分割リズムから2分割へ変えられることが分かった。結論として、1)これまでタランテッラの3分割リズムと2分割リズムの関係は「曖昧なリズム」と論じられてきたが、むしろ「交換可能で流動的なリズム」と新たに解釈できることを示し、2)ザンポーニャ奏者と踊り手の身体感覚が一致することによって、タランテッラのリズムが音楽と舞踊に分かち持たれていることを指摘した。
収録刊行物
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- 音楽学
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音楽学 67 (1), 17-33, 2021
日本音楽学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390856738294642176
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- ISSN
- 21899347
- 00302597
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可