集団的無意識と目覚め:ヴァルター・ベンヤミンの『パサージュ論』

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タイトル別名
  • Kollektives Unbewusstes und Erwachen in Benjamins Passagenarbeit

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[要旨] ベンヤミンは『パサージュ論』を、一九二七年にルイ・アラゴンの『パリの土着民』(一九二五年)を読んださいに着想をえて計画するが、その後しばらくの中断を経て、一九三五年七月初旬、フランクフルト研究所の助成金を目的とする、『パサージュ論』のドイツ語梗概「パリ――十九世紀の首都」が成立し、さらに一九三九年三月、ドイツ語便概をフランス語に書き改めたフランス語便概「パリ――十九世紀の首都」が成立する。『パサージュ論』はその構想の一部が複製技術論やボードレール論などの論文として『社会研究所』紀要に掲載されるものの、結局完成することなく、大量の資料と覚書からなる断片群が遺されことになる。ベンヤミンは『パサージュ論』の便概と断片群で、十九世紀の技術の発展、歴史的な「経済的な諸事実」と、この時代の社会を支配するさまざまな「幻ファンタスマゴリー像」とのあいだの「根源史」を、「表現」、集団的意識、「目覚め」といった概念をつうじて描きだそうと試みる。ベンヤミンは、「経済的な諸事実」を「根源」としてとらえることによって、十九世紀、さらに二十世紀の社会を支配している経済的・政治的構造を問い直し、変革のための新たな可能性を見いだそうとするのである。

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