疾患関連相分離タンパク質をターゲットとしたペプチドバインダーの設計

書誌事項

タイトル別名
  • Development of peptide binder design method for disease-related phase separation proteins

抄録

<p>認知症やアルツハイマー病などの神経変性疾患には,液-液相分離する「相分離タンパク質」が関与している.液-液相分離とは,タンパク質が低い濃度で分散している液相中に,タンパク質の密集した液相が形成される現象である.タンパク質が密集することで高効率な化学反応が可能となるが,同時に疾患の原因となる不溶性の凝集体を形成するリスクがある.実際に,神経変性疾患関連タンパク質は不溶性の凝集体を形成することで,神経に大きなダメージを与え,記憶や運動障害などを引き起こす.創薬には,相分離タンパク質の天然変性領域(特定の立体構造を持たない)に強く結合し,相分離状態を制御できる医薬品候補分子の設計が必要である.本稿では,相分離タンパク質に結合するペプチド設計に関して私達の研究を中心に紹介する.ペプチド創薬では,膨大な数のペプチドから医薬品候補を効率的に探索することが求められる.私達は,相分離タンパク質を制御するペプチドの効率的な探索法として,液-液相分離を制御できるアミノ酸の探索を行い,効果の出たアミノ酸を含むペプチドを設計する方法を考案した.この方法を用いて,神経変性疾患関連タンパク質FUSの液-液相分離や固体状の凝集体形成を制御できることを実証した.さらに,ターゲットの天然変性領域と相補的に結合するペプチドを合理的に設計する方法も考案し,がん疾患関連タンパク質p53の機能制御を実証した.最後に疾患関連相分離タンパク質の創薬の可能性を議論する.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 157 (6), 392-395, 2022

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (9)*注記

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