書誌事項
- タイトル別名
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- Chronological Comparison of Traveling Abroad among Japanese Young Adults in the 2010s
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抄録
「若者の海外旅行離れ」とは,日本人の若者の海外出国率が最も高かった1990年代の半ばと比較して2000年代後半の若者の出国率が全体として低迷していた現象と定義される。ところが現在においても,マスメディアでは「若者の海外旅行離れ」の存在を当然視するものが多くみられる状況となっている。そこで本稿では,「若者の海外旅行離れ」が,2010年代の半ばの現在においても継続しているのかどうかについて検証することを目的として,政府による統計データ,筆者が2010年,2013年,2016年の各年に実施したアンケート調査のデータの双方を用いて分析を行った。明らかになった点は次のとおりである。 第1に,政府による統計データを概観した結果,15~19歳,20~24歳の若者,とりわけ女性については,出国者数,出国率とも2000年代半ばの低迷状況を脱して現在では海外旅行が活発化してきている。その一方で,25~29歳では男女共通して微増,横ばいの状況が続いている。 第2に,アンケート調査結果を用いて,行動と心理の両面での時系列分析を行った。その結果,18~24歳の若者と,25~29歳の若者とでは海外旅行行動の状況が異なっていることが明らかになった。前者については,未経験者の比率が減少し,経験者の比率が増えつつある。また,過去5年以内に海外旅行を実施している人の比率も増加している。一方,後者については,未経験者,否定派の比率の増加,経験者の比率,最近5年以内実施者の比率の低下が確認された。心理面についてみていくと,全体として海外旅行への関心度の向上は認められず,個人内阻害要因,対人的阻害要因の知覚の程度の上昇がみられた。 以上の分析から,2010年代半ばにおいては,10歳代後半・20歳代前半の若者については,女性や学生を中心に「若者の海外旅行離れ」の状態を脱しつつあると考えられる。逆に,25~29歳の人については,依然として「若者の海外旅行離れ」が続いている可能性がある。ただし,若者全体として海外旅行への関心の高まり,阻害要因の知覚の程度の低減といった心理面の回復傾向は認められない。 最後に,政府の掲げる若者のアウトバウンド活性化に関しての課題を記述した。
収録刊行物
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- 玉川大学観光学部紀要
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玉川大学観光学部紀要 (5), 1-23, 2018-03-31
玉川大学
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390857063648790272
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- NII論文ID
- 120006868429
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- NII書誌ID
- AA12676352
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- HANDLE
- 11078/1314
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- ISSN
- 21883564
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可