脳卒中患者に対するTrunk Solution の装着が歩行の時間的左右対称性に与える影響

DOI
  • 古海 真悟
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 吉村 雅史
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 吉田 大地
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 入江 美帆
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 日高 健二
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 脇坂 成重
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 遠藤 正英
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに】</p><p>脳卒中片麻痺患者は麻痺側のTrailing Limb Angle( 以下:TLA) 低下による立脚後期(以下:TSt)の短縮に伴い, ストライド長低下を生じ歩行非対称性を認めると考えられている. 近年開発されたTrunk Solution( 以下:TS) は, 継ぎ手の抗力により体幹を伸展方向と骨盤を前傾方向に回転させる力を与えるため, 歩行のTSt に股関節伸展角度拡大により, 股関節屈曲筋群が伸張刺激を受けることで振り出しの拡大に寄与する可能性があると示唆されている. 先行研究から脳卒中患者のTLA, ストライド長拡大による歩行非対称性改善にも有効性が期待できると考えられるが,TS の有効性としてTLA 拡大や歩行非対称性の改善を認めた報告はない. そこで, 脳卒中患者のTS 装着下での歩行練習が歩行の時間的左右対称性に与える影響についてシングルケースデザインにて分析したので報告する.</p><p>【方法】</p><p>対象は, 左被殻出血により右片麻痺を呈した50 歳代男性(第147 病日)で,Brunnstrom Recovery Stage は上肢Ⅲ- 手指Ⅲ- 下肢Ⅴ, 筋力はGMT で上肢1, 下肢3, 体幹3,Trunk Control Test100 点,Functional Ambulation Categories4 点,FIM118点(運動84点,認知34点) で病棟内移動は独歩自立, 高次脳機能障害は認められなかった. 歩行の麻痺側遊脚期において分廻しと麻痺側立脚初期での股関節外転接地を認め, 非麻痺側の立脚期が延長していた. 方法は対象に右側大転子, 第5 中足骨頭にランドマークを貼付した状態で,10m 快適歩行速度をTS 装着前とTS 装着下での10 分間の歩行練習後に実施し, 矢状面上より動画を撮影した. 測定項目にはTS 使用前後での10m 快適歩行速度, 歩数,TLA, ストライド長, 立脚時間, 遊脚時間を採用した.TLA とストライド長は歩行動画から画像解析ソフトImage J を用いて抽出し,3 歩行周期の平均値とした. 左右の立脚時間と遊脚時間は足圧モニタインソールPiT(リーフ社製)にて1 歩行周期を0.01 秒単位で算出し,3 歩行周期の各平均値を抽出した.</p><p>【結果】</p><p>各測定値はTS装着前/後で10m快適歩行速度0.93/1.2(m/ 秒),歩数19/17( 歩),TLA14.8/18.7( °), ストライド長右0.57/0.62(m), 左0.56/0.59(m), 立脚時間右0.61/0.60( 秒), 左0.83/0.73( 秒), 遊脚時間右0.49/0.48( 秒), 左0.32/0.33( 秒) であった.</p><p>【考察】</p><p>TS の有効性は,TS 装着後のTSt において股関節伸展角度拡大を認めることが報告されている.TS 装着後の歩行では, 麻痺側TSt でのTLA 拡大が得られ, ストライド長が拡大したことから, 歩行速度の向上と歩数の減少につながったと考える. また, 脳卒中患者は麻痺側TLA 拡大により, 遊脚期での分廻しが軽減することが報告されている. TS 装着後の歩行では, TSt での麻痺側TLA 拡大が得られ, 遊脚期での努力的な振り出しである分廻しが軽減し, 麻痺側立脚初期での股関節外転接地が軽減したことから, 両脚支持期に麻痺側への荷重移動が円滑となり, 非麻痺側立脚時間の短縮につながったと考える. 本研究の結果から脳卒中患者においても,TS 装着後に歩行の時間的左右非対称性が軽減する可能性が示唆された. 今後, 対象数を増やしTS 装着による脳卒中患者の歩行非対称性に与える効果を検証していく必要があると考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に則り研究の目的, 方法, 協力者が不利益を受けないこと, データ管理, 公表方法を本人に説明し, 同意を得た.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390857202734276608
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_119
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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