大腿骨転子下骨折に対するインタータン術後の経験~車椅子を使わないリハビリテーションを実践して~

DOI
  • 永村 健太
    佐世保国際通り病院 リハビリテーション科
  • 池田 美佳
    佐世保国際通り病院 リハビリテーション科
  • 宮原 孝典
    佐世保国際通り病院 リハビリテーション科
  • 船津 祐一
    佐世保国際通り病院 リハビリテーション科
  • 長友 亮
    佐世保国際通り病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】</p><p>今回高齢な症例に対しInterTAN 術施行後,当院での治療開始当初から車椅子を使わず、積極的にリハビリを展開し短期間に歩行を獲得した症例を経験したので報告する.</p><p>【症例】</p><p>70 代女性,次男と二人暮らし.当初より認知機能の低下が認められていた.201X 年Y 月Z 日,20 時頃朝と勘違いしデイサービスに行こうとし転倒受傷.A 病院にてZ +2 日InterTAN 術施行,翌日よりリハビリ開始される.荷重時痛軽減したZ +13 日より歩行器歩行開始.Z +15日のA 日にリハビリテーション目的で当院に転院したが,年末入院,院内インフルエンザ流行と重なり治療開始はA +10 日となった.開始当初,廃用による筋力低下と右股関節痛のためADL ほぼ全介助であった.疼痛自制内となった翌日から起立訓練開始し,歩行へと進めた.歩行改善に伴いA +26日靴下着脱が可能に.A +44 日カンファレンスにて施設入所の方針決定.</p><p>【方法】</p><p>病棟内ADL評価を基本的生活動作(以下BI).歩行能力は10m歩行speed,歩数.またA +13,20 日は2 本杖,A +27,34 日は1本杖で評価した.股関節のROM を座位のFinger-Floor Distance(以下FFD)にて計測し,疼痛はNRS にて評価した.</p><p>【結果】</p><p>BI は入院当初55 点であり,減点項目は移乗,トイレ動作,入浴,歩行,階段昇降,更衣.A +40 日には90 点で減点項目は入浴,階段昇降となり,その後は変化なく現在に至る.</p><p>歩行はA+13日とA+20日二本杖,A+27日とA+32日を一本杖で評価し順に継時的に表記する.歩行speed(秒)は,40.9,27.5,43.8,33.5,歩数(歩)は,40,31,38,36 であった.FFD(cm)はA +10日は+8(P),A +17 日,+3.A +24 日には±0となった.NRS はA +11 日は5/10 であったが,A +13 日は3/10 となり現在は0 ~2 を推移.</p><p>【考察】</p><p>寺田2)は「術後早期の疼痛が有意に少ないということは,早期離床に対して非常に有益である」と述べている.症例はInterTAN 術により疼痛が抑えられることで,積極的な歩行訓練が可能であったと考える.</p><p>治療開始がA +10 日と遅れたが屋内歩行獲得を達成できた.要因として今回実施したリハビリの効果は大きい.大川2)は「車椅子偏重」からの脱却がリハビリや生活の質的向上の大きな突破口であり,「将来歩くことが可能になる人に車椅子の練習をする必要はない」と述べている.移動を全て歩行にて行った事で活動が促進されADL が改善した.治療初期から可能な限り病前の生活に近づけることが廃用の改善に効果がありQOL 向上にも繋がった.</p><p>今回常にPT,OT 2人チームで介入する事を基本とした.歩行能力が不十分で転倒リスクの高い患者に2 人で介入する事でリスク管理の強化された集中的な歩行練習が可能となり,常に意見交換,情報共有を行いながら患者の状態を深く把握でき教育的観点からも有効である.</p><p>症例は活動促進を重点的に行い,他動的ROM 訓練は実施せず靴下着脱が可能になった.生活を想定した積極的かつ集中的な訓練の活動促進による各関節の動的ストレッチ効果がROM 拡大に貢献した.</p><p>今回,「車いすを使わないリハビリ」の提供は,より早期の歩行能力獲得に有用であった.しかし,本来の目標は「車いすを使わない生活」の実践であり,生活の中での実現を目指したい.</p><p>【参考文献】</p><p>1,2)寺田忠司:INTERTAN での治療(MB Orthop.30:44-52,2017)</p><p>3)大川弥生:新しいリハビリテーション人間「復権」への挑戦講談社現代新書</p><p>【倫理的配慮,利益相反】</p><p>本報告に際し対象者の同意を得,ヘルシンキ宣言を遵守しプライバシー保護に最大限配慮した.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390857202734363648
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_97
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ