ACL 損傷リスクの抽出の試み

DOI
  • 森口 晃一
    森寺整形外科 リハビリテーション科 山形県立保健医療大学大学院 保健医療学研究科理学療法学分野博士 後期課程
  • 山田 将弘
    森寺整形外科 リハビリテーション科
  • 羽木本 宗俊
    森寺整形外科 リハビリテーション科
  • 岡澤 和哉
    山形県立保健医療大学大学院 保健医療学研究科理学療法学分野博士 後期課程 九州大学病院 リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに】</p><p>膝前十字靭帯損傷(以下,ACL 損傷)予防は,かねてから重要な課題の1つである.これまで,ACL 損傷について多数の要因が報告されている.また,予防に関する報告も多数存在する.その中で,我々は,スクワット動作の方法に着目し,動作の方法とACL 損傷の関係を調査することを試みたので,報告する.</p><p>【方法】</p><p>対象は,中学校バスケットボール部に所属する健常女性17 名(年齢13.59 ± 1.06 歳)とした.</p><p>方法は,踵が浮かない範囲で可能な限り深くしゃがむ動作を指示し,その動作を対象者の矢状面よりデジタルカメラで撮影した.撮影した動画を,二次元動画解析ソフトKinovea で解析を行い,静止立位から膝関節屈曲30°に達するまでに,鉛直線に対する下腿の前傾角度よりも体幹の前傾角度が小さい場合は不良,同等か大きい場合は良好と定義し,群分けを行った.また,対象者を背臥位にし,検者が対象者の大腿遠位部と踵部をもって他動的に膝関節を伸展させ,踵部が床面より浮いた場合は過伸展膝,浮かない場合は通常膝と定義した.</p><p>観察より約2 年後のACL 損傷の有無について確認を行い,しゃがみ込み動作との関係を検討した.統計学的検討は,フィッシャーの正確確率検定を用い,有意水準は5%未満とした.</p><p>【結果】</p><p>しゃがみ込み動作の良好群は11 名,不良群は6 名であった.約2 年後の追跡調査では,3 名はバスケットボールを継続しなかったため14 名が対象となった.しゃがみ込み動作判定の内訳は,良好群は9 名,不良群は5 名となった.14 名のうち2 名にACL 損傷が発生し,2 名ともに不良群に分類されていた.統計学的に有意差は認めなかった.また,この2 名のうち,1 名は過伸展膝と判定されていた.</p><p>【考察】</p><p>ジャンプ着地時のACL 損傷は,約30msec に生じることが報告されている.そのため,今回の調査は,静止立位から膝関節30°屈曲までという動作初期に着目した.統計学的には有意差を認めなかったものの,2 年後の追跡調査で,しゃがみ込み不良と判定した群から2 名の受傷が生じてしまったことは,軽視できないと考える.</p><p>スクワット動作あるいはしゃがみ込み動作において,下腿の前傾と同調して体幹前傾が生じることが重要であると考える.また,評価として,動作初期段階での体幹と下肢の動きに着目することも重要と思われる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に沿い実施した.また,対象者および指導者には研究の目的や方法について説明を十分に行い,同意を得て実施した.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390857202734402304
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_77
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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