糸島市における高齢者の社会参加と生きがい感の性差について
説明
<p>【目的】</p><p>近年、高齢者の主観的幸福感やQOL 等の関連要因を明らかにする研究が行われている。要因の一つである生きがい感は、様々な概念を包括しており、定義化についてこれまでの科学的根拠を整理した研究はほとんどない。研究対象である糸島市は、令和3 年度における高齢化率は29.8% と全国平均より高い水準で推移している。高齢者の人口構造では、住民基本台帳人口でみると前期高齢者は団塊の世代が移行した影響を受け急激に増加しており、総人口に占める割合で平成25 年の前期高齢者は12.7% で、平成29年では15.2% と前期高齢者の伸びが顕著である。本研究では九州大学と共同研究を行い、地域在住高齢者の性差と前期高齢者・後期高齢者の世代間による生きがい感の現状を分析し、高齢者自身の生きがい感が健康増進活動における効果的な支援施策を選定するために有効な手段となり得るかを検討した。</p><p>【方法】</p><p>糸島市在住の65 歳以上高齢者で、令和2 年度に福岡県糸島市と九州大学が共同で実施した疫学調査の結果報告会に参加した197 名( 男性96 名、女性101 名) に実施した。生きがい感評価は高齢者向け生きがい感スケールにて、24 点をカットオフ値とした。「大変高い」「高い」と評価したA 群についてMann-WhitneyU 検定にて得点の有意差を比較した。分析対象者の基本属性について、t 検定及びカイ2 乗検定にて有意差を比較した。統計解析は、Windows 版Free JSTAT を使用し、有意水準は5% とした。</p><p>【結果】</p><p>分析対象者の基本的属性の比較について、性別は前期・後期高齢者女性は同群男性と比べて生きがい感の得点が有意に高かった(p=0.01)。配偶者は後期高齢者で女性は同群男性に比べ死別者が多くを認め、後期高齢者女性に死別者が含まれる理由に有意差を認めた(p=0.01)。健康は前期高齢者男性で同群女性と比較し、男性は健康意識が高かった(p=0.04)。身体活動量減少は前期及び後期高齢者とも女性は同群男性に比べ有意に身体活動量は減少していた(p=0.01)。活動内容は前期及び後期高齢者とも女性は他者との関わりを主体とし、男性は個人での活動を行う傾向にあり活動内容に有意差を認めた(p=0.01)。</p><p>生きがい感の男女群における性差について、存在感因子においてA 群前期高齢者で男性に比べ女性は点数が有意に高かった(p=0.048)。</p><p>【考察】</p><p>高い生きがい感や低下させない要因について検討することは、高齢者の特性を理解する上で重要であると考えた。本研究において、前期及び後期高齢者分類で共通して、女性は男性と比較しコミュニテーを確立しやすい傾向が示唆され、高齢期における地域活動は人間関係を形成する上で重要な役割を担っているのではないかと考える。A 群において高い生きがい感の獲得は、自立した生活を営むために健康を意識し、趣味やボランティアなどの社会参加を通して人との関わりや協調性を維持または獲得することが可能であると考える。生きがい感の項目に着目することは高齢者特有の活動低下因子を運動機能以外からも検討することが可能であると示唆している。本研究の集団特性から得られた結果について、高齢者は家庭や地域社会において自己の存在意識を見出し、生きがい感における存在感因子に着目することは高齢期における他者とのつながりの一要因として有効な手段になり得るのではないかと考える。</p><p>【結論】</p><p>生きがい感評価における存在感因子の獲得や維持が家庭や地域社会とのつながりの一要因になり得るのではないかと考える。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は所属施設と共同研究施設の倫理審査委員会の承認(20-Ifh-606)(IfD-208)後、対象者に書面及び口頭にて十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。本研究における開示すべき利益相反はない。</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士学術大会誌
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九州理学療法士学術大会誌 2022 (0), 94-94, 2022
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390857202734416128
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- ISSN
- 24343889
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可