ヒト静止立位姿勢のニューロメカニクス:脳と身体メカニクスの巧みな相互作用

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抄録

<p>従来,ヒト静止立位姿勢は,アキレス腱の高剛性と重力に対抗するふくらはぎ筋(ヒラメ筋)の持続的緊張,および静止立位姿勢動揺の中で繰り返し発生する前方への微小転倒に伴う筋伸張が引き起こす伸張反射(ふくらはぎ筋の遠心性収縮)が生成する復元力によって安定化されると考えられてきた.ところが,英国グループによる最新の筋形状動態計測は,ふくらはぎ筋は微小転倒時には短縮し(逆説的筋短縮=伸張反射以外の機序による求心性収縮),それに引き続いて姿勢が直立平衡姿勢に向かって復帰する微小回復過程で弛緩・伸張する(運動指令のスイッチがオフされる)ことを発見した.そこで,我々は従来仮説に反する逆説的筋短縮の理論的生成機序となる間欠制御仮説を提唱した.間欠制御モデルは,姿勢の姿勢状態に依存して時間遅れフィードバック制御・運動指令のスイッチを間欠的にオフ・オンするような,不安定サブシステム間スイッチ型ハイブリッド制御モデルであり,逆説的筋短縮のみならず,健常者立位姿勢ゆらぎ特性等,従来仮説に基づく数理モデルでは再現することが困難であった現象の再現を可能にするとともに,現象の発生メカニズムを説明することができる.さらに,間欠制御の視点に立つと,大脳基底核疾患であるパーキンソン病患者の姿勢不安定化は制御の間欠性が欠如する(制御のスイッチがオフにならない)ことに起因する可能性を定量的に示すこともできるようになってきた.ここでは,間欠制御仮説に基づくヒト立位姿勢のニューロメカニクスの概要,および間欠制御の脳内メカニズムの解明を目指す我々の研究の一端を紹介する.</p>

収録刊行物

  • 生体医工学

    生体医工学 Annual60 (Abstract), 117_1-117_1, 2022

    公益社団法人 日本生体医工学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390857226429291776
  • DOI
    10.11239/jsmbe.annual60.117_1
  • ISSN
    18814379
    1347443X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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