アフリカツメガエル原腸胚の力学特性:見えてきた引張特性と圧縮特性の大きな違い

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抄録

<p>力学的因子が発生に決定的な役割を果たすことが報告され始めている.これを明らかにするには胚内部の応力場を知る必要があり,そのためには胚の力学特性が必要である. 胚の力学特性は従来,切出した組織片の圧縮試験や胚断面の押込試験などで調べられており,原腸胚ではヤング率換算で数10Pa程度と報告されてきた.一方,我々は胞胚腔 (原腸胚内部の空洞)を加圧した際の変形から胞胚腔蓋(胞胚腔の壁)の引張特性を調べ,30kPa程度と圧縮試験の500〜1000倍の値を得た.しかし両者には荷重負荷方向や切出の有無など違いがある.そこで原腸胚を両側からピペットで軽く吸引して把持し, 圧縮・引張を加えた際のスティフネスを計測した.この際,圧縮時に胞胚腔蓋に引張りが作用する可能性を排除するため胞胚腔蓋に微小孔を空け,胞胚腔内圧の上昇を抑えた.胚のスティフネスは引張時に圧縮時の約4倍であった.この結果から胚組織の引張・ 圧縮の弾性率を推定するため,胚の有限要素モデルを作成し引張・圧縮時の挙動をシミュレーションした.胚内部の引張の加わる領域と圧縮の加わる領域の弾性率を様々に変えて推定した結果,胚組織のヤング率は引張時5200Pa,圧縮時80Paという結果を得た.胚の引張特性と圧縮特性に極めて大きな違いがあることは確実と言える.この違いは胚内部のアクチンフィラメントが引張時のみ力を負担することで生じている可能性がある.</p>

収録刊行物

  • 生体医工学

    生体医工学 Annual60 (Abstract), 197_2-197_2, 2022

    公益社団法人 日本生体医工学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390857226429381504
  • DOI
    10.11239/jsmbe.annual60.197_2
  • ISSN
    18814379
    1347443X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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