認知症,フレイル発症に関わる性ホルモン作用の最新研究

  • 高山 賢一
    東京都健康長寿医療センター研究所老化機構研究チームシステム加齢医学

書誌事項

タイトル別名
  • Recent advances in the sex steroid hormone action involved in the development of dementia and frailty
  • ニンチショウ,フレイル ハッショウ ニ カカワル セイ ホルモン サヨウ ノ サイシン ケンキュウ

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抄録

<p>性ホルモン量は胎内および思春期において著明に増加し,女性らしさや男性らしさの成熟を促進し,生殖や成長を担う重要なホルモンである.一方で年齢を重ねると血液中のホルモンの値は徐々に減少し,女性は更年期に,男性も中年期以降は徐々に減少し「老い」を実感する原因となる.また高齢者における認知症,骨粗鬆症,サルコペニアといったフレイル症状につながることも報告され,性ホルモンは一生にわたり健康長寿において重要である.性ホルモンであるエストロゲンおよびアンドロゲンはそれぞれエストロゲン受容体,アンドロゲン受容体を介して機能する.古くから動物モデルの開発によりこれら性ホルモン受容体は筋力の維持,脳の機能,代謝,骨量の維持において重要な役割を果たす膨大な報告が既にある.細胞に侵入した性ホルモンと結合した性ホルモン受容体は核内受容体として機能し,ゲノム中の特異的な標的遺伝子の近傍に結合する.性ホルモン受容体は共役因子群と結合しエピゲノム状態を変化させることにより標的遺伝子の発現制御を行っている.しかしながら,各種組織における標的遺伝子の同定および性ホルモン受容体の働きは十分に解明されたとは言い難い.近年,次世代シークエンサーの発展,各種オミックス解析の発達により組織特異的な性ホルモンの作用を解き明かそうとする研究が報告されつつある.また性ホルモン受容体の動物モデルの解析により臓器連関によるシステムとしての生体作用の重要性も示唆されている.さらに細胞内での転写制御研究では新たな概念である細胞の運命を決定するスーパーエンハンサー,液液相分離によるタンパク質の複合体形成メカニズムが性ホルモン受容体の機能,病気と関連することが報告されている.最先端の研究報告では実験対象が動物モデルからヒトオルガノイド研究へ移行する必要性も示唆される.本稿ではこれら近年の研究を概説,振り返るとともに今後の性ホルモン研究の進展について考えたい.</p>

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