アルコール性慢性膵炎に合併した 皮下結節性脂肪壊死症の 1 例

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  • Subcutaneous Fat Necrosis Associated with Chronic Alcoholic Pancreatitis

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抄録

<p>57歳,男性。 3 年前からアルコール性慢性膵炎,肝硬変にて内科に通院していたが,飲酒は継続し膵炎の増悪を繰り返していた。 6 週間前に右下腿に,遅れて左下腿に紅斑が出現, 2 週間前より増数し圧痛を認めるようになった。両側下腿に示指頭大からクルミ大までの硬結を伴う紅斑が散在性に多発し,右下腿では紫斑を混じていた。臨床検査では炎症反応の軽度上昇とアミラーゼ,リパーゼの異常高値を認めた。病理組織学的には皮下脂肪組織上層の密な炎症細胞浸潤,下層の変性,壊死,ghost-like cell が認められた。以上の所見より皮下結節性脂肪壊死症と診断した。皮疹は膵炎の改善とともに無治療で消退した。本症の既報告例を検討したところ,性別では男性に若干多く,全例で下腿に皮疹を認めた。合併する膵疾患は急性膵炎,原発性膵癌,慢性膵炎で 9 割以上を占めていた。診断には皮疹の病理組織学的検討とリパーゼの測定が有用であった。臨床経過では61.7%で皮疹が膵疾患に先行して認められていることから,本症の診断を確定することによって膵炎に対する治療をより早期に開始することが可能になると考えられる。したがって,発症頻度は極めて稀ではあるが,本症は常に念頭におくべき疾患と言うことができる。 (皮膚の科学,21 : 226-230, 2022)</p>

収録刊行物

  • 皮膚の科学

    皮膚の科学 21 (3), 226-230, 2022

    日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会

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