小児がんの治療中・治療後の口腔内管理

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  • 馬場 園恵
    宮崎大学医学部附属病院歯科口腔外科・矯正歯科 主任歯科衛生士

抄録

<p>小児がんは急性リンパ性白血病や急性骨髄性白血病などの血液がんが多く、次いで脳腫瘍等の固形がんが多い。その治療内容は化学療法・放射線治療・外科 的切除・造血幹細胞移植の単独またはこれらを組み合わせた治療法である。これ らの治療では口腔内の有害事象の一つとして口腔粘膜障害があり重篤な口腔粘膜 障害が出現すると疼痛による苦痛や食事摂取困難等、QOL の低下を招く。</p><p>当院小児科におけるがん治療の口腔管理を医師・看護師と連携を取りながら歯 科口腔外科・矯正歯科で行っている。その中で 2019 年 1月から2021年 12 月まで の過去 3 年間において小児科より紹介があった小児がん患児は急性リンパ性白血 病 27名 急性骨髄性白血病 12 名 悪性リンパ腫 2 名 骨髄異形成症候群 1 名 脳腫 瘍などの固形がんが17名 計59名であった。その中で、化学療法のみが54名 手術・ 化学療法・放射線治療などを組み合わせた治療法を受けた患児が2名 造血幹 細胞移植が 3 名みられた。小児がん治療での口腔粘膜障害の出現率は 40 ~ 80% という報告が多い中、当科の検討では口腔粘膜障害の評価分類 CTCAEvo4 の Grade 分類においてGrade1 以上の口腔粘膜障害が出現した患児は 59 名中 18名(30%)であり、当科での口腔管理が他施設と比較して成績良好と考えられた。し かしながら Grade2 4 名(6%)Grade3 2 名(3%)の患児では食事形態の変更が必 要であり粘膜障害期間中の慎重な加療が必要であった。これらの口腔粘膜障害は 平均 3 ~ 6日で改善を認めた。</p><p>小児がん治療後においても継続的に口腔管理が必要である。その中でも注目す べき点として小児がん治療後の齲蝕の罹患率が高いという事である。前述した 59 名のうち乳歯萌出時期の 7~ 8 か月以降から 3 歳までの期間に小児がん治療を開 始した患児が 31 名、その中で 1 名のみ治療開始前に 5 本の齲蝕(C1)を認めたが その他の患児はノンカリエスであった。しかし、退院後、13 名(42%)の患児が齲 蝕に罹患していた。特筆すべきはその本数である。厚生労働省の 2016 年度齲蝕対 策ワーキンググループの報告によると3 歳児の平均齲蝕本数は 0、 54 本 12 歳児で は 0、 84 本という報告がある中、小児がん治療後では平均 6、 5 本の齲歯を認めた。 これは治療後の副作用も関係があるが、小児がん治療後の食事指導や歯、歯周組 織に対する継続的な口腔ケアの徹底も小児がん治療の周術期口腔機能管理にお いては非常に重要であると考えられた。</p><p>今回の講演では当科にて行った小児がん治療中・治療後の口腔管理方法、成績 およびその重要性について講演する。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390857357572026112
  • DOI
    10.34597/npc.2022.3.0_s1-2
  • ISSN
    24358460
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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