多発外傷において診断が遅れた外傷性内頚動脈海綿静脈洞瘻の合併例

書誌事項

タイトル別名
  • Delayed diagnosis of traumatic internal carotid-cavernous sinus fistula due to multiple trauma
  • タハツ ガイショウ ニ オイテ シンダン ガ オクレタ ガイショウセイ ナイ ケイドウミャク カイメン ジョウミャクドウロウ ノ ガッペイレイ

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説明

<p> 重症頭部外傷による脳血管損傷に続発し,内頚動脈瘤や解離,内頚動脈海綿静脈洞瘦(carotid‒cavernous fistula: CCF)などが発生することはよく知られている.これらに対する脳血管内治療の有効性は高く,確実な治療が可能であるため早期の診断が重要である.我々は多発外傷における外傷性CCFの合併および自然治癒例で,体幹部外傷の治療を優先する必要があり,外傷性くも膜下出血の存在を認知しつつも診断の遅れと重篤な後遺症をきたすことになった症例を経験したので報告する.症例は17才男性.交通事故による多発外傷であり,頭部CTにて外傷性くも膜下出血および頭蓋底部分に気脳症を認めていたものの,脾損傷による腹腔内出血・出血性ショックのため,その診断および治療が優先された.2日目の頭部CTでは脳梗塞が認められた.当初より大量の鼻出血,頭蓋底骨折と,症候学的には外傷性内頚動脈損傷を示唆していたが,眼症状なく重度の意識障害のため病態が十分把握できず,5日目にCTAを施行したところCCFおよび内頚動脈解離が確認された.すでに広範な脳梗塞が出現しており,患者の状態から保存的加療を選択した.follow‒up CTによりCCFの自然治癒が確認されたが,患者はmRS 5と重度の機能障害が残存し入院60日で転院となった.重症頭部外傷では,脳血管損傷の可能性を考え,それを示唆する症状,画像所見を認めた場合には血管造影など早期の診断により治療につなげることが重要である.</p>

収録刊行物

  • NEUROSURGICAL EMERGENCY

    NEUROSURGICAL EMERGENCY 27 (2), 130-136, 2022

    特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency

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