ダーク・プールが市場効率性と価格発見メカニズムに与える影響~人工市場モデルと数式モデルを用いたメカニズムの分析~

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タイトル別名
  • Effects of Dark Pools on Financial Markets' Efficiency and Price-Discovery Function: An Investigation by Multi-Agent Simulations

抄録

<p>株式市場において,注文を公開せずに注文を付き合わせる,ダーク・プールという取引市場が普及してきている.ダーク・プールは市場の安定化につながると言われている一方,ダーク・プールは価格決定を行わない市場であるため,市場全体の価格発見機能が低下し,市場全体の効率性が失われるという批判もある.本研究では1つのリット市場(注文情報が公開されている通常の市場)と1つのダーク・プールが存在する人工市場モデル(マルチ・エージェント・シミュレーション)を用いて,ダーク・プールの普及が市場の効率性や発見機能にどのようなメカニズムで影響を与えうるか議論行い,さらに,シンプルな数式モデルを提案し,可能性のあるメカニズムについて議論を深めた.その結果,ダーク・プール売買数量シェアある値より小さい領域で市場は効率化し,それを超えると非効率となることが分かった.これは最適なダーク・プール売買数量シェアが存在することを示している.SOR(smartorderrouting)は成行注文をリット市場からダーク・プールへ回送するため,リット市場への約定率が低下する.これにより,リット市場での指値注文は厚くなり,これらが成行注文を吸収する.そのため,市場価格はファンダメンタル価格付近にとどまり市場は効率化する.しかし,ダーク・プールに多くの買い注文が待機しすぎると,市場価格をファンダメンタル価格へ収束させる成行注文がSORによりダーク・プールへ回送されて待機注文に吸収されてしまい,市場価格はファンダメンタル価格に収束しなくなる.そのため,市場は非効率になる.また,シンプルな数式モデルを用いてダーク・プールが市場を効率化または非効率化するメカニズムを議論した.市場が効率化するか非効率化するかは,リット市場とダーク・プールの売買数量の大小関係が,本質的に重要であることを示した.ダーク・プールでの売買数量がリット市場での売買数量を超えると市場が非効率化する恐れがあることを示した.ダーク・プールの使用量が小さい場合,大きな売り買いの不均衡があっても,価格発見機能は破壊されないことを示した.一方,ダーク・プールの使用量が大きい場合,非常に小さな売り買いの不均衡によって,ダーク・プールは価格発見機能を破壊してしまうことが示した.そして,シミュレーション結果とも比較を行い,傾向は一致していることを確認した.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390857435058028288
  • DOI
    10.11517/jsaisigtwo.2016.fin-016_16
  • ISSN
    24365556
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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