摩擦攪拌点接合を用いた新規異材接合法におけるウェルドボンド継手の継手強度特性

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タイトル別名
  • Mechanical Properties of Weld Bonded Joint in New Dissimilar Metal Joining Method Using Refill Friction Stir Spot Welding
  • マサツ カクハンテン セツゴウ オ モチイタ シンキ イザイ セツゴウホウ ニ オケル ウェルドボンド ツギテ ノ ツギテ キョウド トクセイ

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抄録

<p> 自動車産業では軽量化を目的とした車体のマルチマテリアル化が進んでおり,アルミニウム合金/鋼の異種金属接合技術のニーズが非常に高まっている1).アルミニウム合金と鋼の異種金属接合は非常に種類が多く,自動車製造での採用実績がある工法だけでもSelf piercing rivetingやFlow drill screw, Friction element weldingなどのリベット接合1)∼3)や,摩擦攪拌点接合(FSSW:Friction Stir Spot Welding)による冶金的接合4)などが挙げられる.他にも自動車の鋼製部品の接合で最も一般的な手法である抵抗スポット溶接による異種金属接合も広く研究されている5),6).</p><p> 一方で,異種金属接合法における固有の課題としてガルバニック腐食があり,これは異種金属の接触面に水分が侵入した際に局部電池が形成され,相対的に卑な金属が腐食される現象である7),8).その対策として板間や接合部表面にシーリング材が塗布されるため,異種金属接合法の評価では接合部への止水方法が合わせて議論されることが多い.特に点接合と接着剤の併用である“ウェルドボンド工法”を板間への止水目的に適用する場合がしばしば見受けられる9).ウェルドボンド工法は自動車製造において鋼板の接合で実用化されており,その工程としては硬化前の接着剤が板間にある状態で抵抗スポット溶接し,その後に熱処理により接着剤を硬化させるというものである.ウェルドボンド工法は接着剤劣化要因の一つであるクリープ変形を抑制できることに加え,車体剛性の向上や車体の振動特性を改善するなど車体構造におけるメリットが多いことで知られている10).さらに接合という観点においては異種金属継手の腐食を抑制する目的だけでなく,接着剤の経年劣化に対する強度保証としての役割も有するため,接合部強度と接着剤強度が両立することが非常に重要になる.しかしながら抵抗スポット溶接の異種金属接合では抵抗スポット溶接部の強度が大幅に減少してしまい,接合自体が困難になることが報告されている11).これはスポット溶接部に接着剤が残留することで通電部における上下板の直接接触を阻害し,接合界面における金属間化合物(IMC:Intermetallic compound)の形成を妨げることが原因であるとされている.このように接合界面の冶金的な反応を伴う接合手法においては,接着剤が阻害層となりうるためウェルドボンド工法の実施が難しいことが知られている.</p><p> 著者はこれまでにFSSWを用いた新規異種金属接合法としてScrubbing Refill FSSW (Sc-RFSSW)を開発し12)∼14),アルミニウム合金/非めっき軟鋼,高張力鋼の接合において高い継手強度が得られることを明らかにした12),14).当手法は自動車組立ラインでの適用を想定し,短時間で高い界面清浄化効果を得ることを開発コンセプトとしており,Fig. 1に示すようにツール圧入工程でツールと下板を直接接触させることを最大の特徴とする.また従来のFSSWではツール/下板接触面が露出し接合面になりえないという課題を解決するために,プロセス中の材料埋戻しが可能な複動式FSSW (RFSSW:Refill FSSW)を適用している15),16).RFSSWはFig. 1に示すように,ツール中心に位置するピンとその外周のショルダが別体で構成されており,このピンとショルダそれぞれが加圧軸方向に対して独立に動作することで,接合部で生じる引抜穴をプロセス中に埋戻すことが可能になる.当手法は類似の研究である複数回の接合プロセスで材料埋戻しを行うFSSW17)や,上下両面に複動式ツールを配置し接合するFSSW18)と同様に良好な継手強度が得られることがわかっているが,いずれの手法においても板間に接着剤を塗布し接合するウェルドボンド工法への適用可能性は検討されていない.自動車車体の製造に適用することを想定するならばウェルドボンド工法との親和性は必須と言えるほど重要であり,本研究では開発法であるSc-RFSSWへのウェルドボンド工法適用可能性を明らかにすることを目的とした.ウェルドボンド工法の適用可能性を検討するうえでは,前述のとおり接合部強度と接着剤強度の両立が重要となるため,Sc-RFSSW接合部自体の強度と接着剤を含む継手全体の強度を評価する必要がある.したがって本研究では板間に接着剤を挟み,接合後に接着剤を硬化させることなく継手強度評価することで点接合部強度を,接合後に接着剤を硬化したうえで継手強度評価することで継手全体の強度を評価した.さらにSc-RFSSWにおける接着剤の排出メカニズムを明らかにすることを目的に,外観や接合断面から接着剤の残留状況を分析した.</p>

収録刊行物

  • 軽金属溶接

    軽金属溶接 60 (Supplement), 14-21, 2022-12-23

    一般社団法人 軽金属溶接協会

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