オキサリプラチン誘発末梢神経障害に対するプロトンポンプ阻害薬の予防効果に関する後方視的研究

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抄録

<p>【目的】オキサリプラチン(L-OHP)による化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は用量規制因子であり、CIPNに対する有効な予防法が渇望されている。プロトンポンプ阻害薬(PPI)は抗炎症作用を有し、ヒト神経芽細胞腫細胞株を用いた検討において神経保護作用を示すことが報告されている。PPIはCIPNに対しても保護作用を示す可能性があるが、実臨床におけるCIPNに対するPPIの影響は知られていない。本研究では、CIPNに対するPPIの有効性と安全性について後方視的調査により検討を行った。【方法】2013年4月から2022年1月までに大阪大学医学部附属病院において、大腸がんに対してXELOX療法が施行された成人患者217例を対象とした。PPI併用群及び非併用群におけるCIPN(Grade 2以上)の発生率、CIPNに起因したL-OHP投与の中止率、CIPN以外の有害事象の発生率、CIPNの発症までの期間、XELOX療法の治療成功期間を比較した。さらに、多変量解析を用いてCIPNに対する影響因子を評価した。【結果・考察】PPI併用群(n=38)におけるCIPN発生率及びCIPNに起因したL-OHP投与の中止率は、PPI非併用群(n=179)より顕著に低かった(それぞれ3% vs. 26%, p=0.001, 3% vs. 20%, p=0.008)。さらに、多変量ロジスティック回帰分析の結果より、CIPNに対する有意な関連因子にPPI併用が抽出された(オッズ比:0.054, p<0.001)。さらに、カプランマイヤー解析の結果からPPI併用群ではCIPNの発症までの期間が非併用群に比べて有意に延長していたが(p=0.004)、CIPNを除く有害事象の発生率及びXELOX療法の治療成功期間には2群間で差は認められなかった。【結論】PPIの併用は、XELOX療法施行中の大腸がん患者におけるCIPNを軽減できる可能性が示唆された。本研究成果は、CIPNに起因するL-OHP治療中断の改善に有用な新知見であると考えられる。</p>

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