安定期腎移植患者を対象としたOATP1B活性に与える遺伝的背景およびCMPF濃度の影響

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抄録

<p>【目的】</p><p> 腎不全患者において、肝代謝型薬物の体内動態は通常変化しないものとして扱われるが、近年いくつかの薬物輸送体の活性が低下することが示されている。OATP1Bは、主に肝臓の類洞側膜に発現する薬物輸送体であり、これまでに炎症性サイトカイン(IL-6, TNF-α)、尿毒素の1つである3-carboxy-4-methyl-5-propyl-2-furanpropionate(CMPF)、OATP1B1*15の発現がその活性を低下することが示されている。我々も過去に、OATP1Bの内因性基質であるCoproporphyrin-I(CP-I)を用いて、腎不全患者ではOATP1B活性が低下していることを明らかとしている。本研究では、上記因子に焦点を当て、安定期腎移植患者を対象にOATP1B活性の個人差の要因を解明することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p> 対象を大分大学医学部附属病院腎臓外科・泌尿器科に通院中の安定期腎移植患者74例とした。血漿中CP-IおよびCMPF濃度は質量分析法、炎症性サイトカインはELISAを用いて測定し、OATP1B1*15の発現はReal-time PCR法にて評価した。</p><p>【結果・考察】</p><p> OATP1B1*15保有群は非保有群と比較し有意にCP-I濃度が高値を示したことから(p = 0.003)、OATP1B活性は遺伝的背景の影響を受けることが示唆された。全患者を対象としてCP-I濃度と各種因子(CMPF, IL-6, TNF-α, eGFR)との相関性を確認した結果、いずれの因子とも有意な相関はみられなかった。次に、CMPF濃度を基にカットオフ(a. 全患者, b. CMPF<10 μg/mL, c. <8 μg/mL, d. <4 μg/mL, e. <2.5 μg/mL)してCP-I濃度との相関性を比較した結果、c~eの群で両濃度に有意な正の相関性が確認され、またCMPF濃度が低値になるにつれてその相関係数がより高値を示した(a. rs = 0.141, p = 0.233;b. rs = 0.189, p = 0.151;c. rs = 0.264, p = 0.047;d. rs = 0.344, p = 0.018;e. rs = 0.418, p = 0.013)。CMPFによるOATP1B活性の阻害作用には濃度依存性がみられるが、高濃度ではその影響が飽和する可能性が示唆された。</p><p>【結論】</p><p> 腎不全患者に対してOATP1B基質薬物を使用する際はCMPF濃度とOATP1B1*15の有無を考慮する必要がある一方で、CMPF濃度が8 μg/mL以上の患者の場合は、特にOATP1B1*15の有無を考慮する必要があるかもしれない。</p>

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