濃グリセリン・果糖注射液投与中止が関与したと考えられる急激な循環動態の変化を伴った1例

DOI

この論文をさがす

抄録

<p>【背景】濃グリセリン・果糖注射液は頭蓋内圧降下と眼内圧降下に適応があり, その主な作用機序はグリセリンによる浸透圧利尿作用と考えられている. 今回, 我々は濃グリセリン・果糖注射液投与後に極端な下大静脈の虚脱と腎機能障害, 肝機能障害を経験したため報告する.【症例提示】脳神経外科で右後下小脳動脈領域の急性期梗塞を認めた75歳男性, 身長165.0 cm, 体重69.0 kg, 既往に高血圧, 糖尿病, 外傷性クモ膜下出血, 心房細動があった. Day 0, 入院時血圧150/110 mmHg, 心拍数90 bpm, 広範囲の梗塞のため抗凝固薬は導入せず濃グリセリン・果糖注射液, エダラボンで治療開始となった. Day 5, 収縮期血圧200 mmHg, 心拍数200 bpmとなりバルサルタン80 mg, ビソプロロールフマル酸5 mg内服を再開した. 午前の循環器科の診察で, 中等度僧帽弁閉鎖不全, 下大静脈径20 mmおよび両側胸水を指摘されフロセミド20 mg静注後, メインの補液を中止した. 濃グリセリン・果糖注射液投与は終了となった. 夕方に心拍数80~100 bpmへ低下し, 夜間の尿量は1.15 mL/kg/hrであった. Day 6, WBC 25000, CRP 19.59, プロカルシトニン 10.40, CK 3427, LDH 1579, 腎機能障害, 肝機能障害が出現した. 血培陽性, 尿量は急激に低下し, 下大静脈径は6 mmと虚脱した. 脱水に対し輸液負荷, 細菌感染に抗菌薬MEPMが開始された. Day 7~8には尿量1.0 mL/kg/hrへ増加した. Day 10には腎機能障害, 肝機能障害は残存したが全身状態は回復傾向となった.【結果・考察】本症例はDay 0, Day 1の採血結果から脱水所見は認められず, 尿量も確保できていた. 循環器科診察時の両側胸水と下大静脈拡大から濃グリセリン・果糖注射液投与により循環血漿量が増加していたと考えられ, 当該薬の投与終了とともに体内水分の分布が変化し, 敗血症併発により脱水と乏尿がほぼ同時に現れたと推察する.【結論】濃グリセリン・果糖注射液の投与終了と感染症発症が重なり循環動態が破綻したと考えられた. </p><p>【参考文献】</p><p>1) グリセオール注インタビューフォーム2018年4月(改訂第4版)</p><p>2) Hayashida R, et al: Internal Medicine 2020; 59: 1659-1663</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ