ヒト難治性乳がん細胞を対象としたマイクロ電流刺激の抗腫瘍効果に関する研究

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<p>【目的】乳がんは女性の年間罹患者数が最も多いがん種であり、現代においても未だに罹患数・死亡者数は増加の一途を辿っている。この大きな原因は既存の治療薬に対して高い抵抗性を有するトリプルネガティブ乳がん (Triple Negative Breast Cancer; TNBC) の存在であり、TNBCに対する有効な治療法の開発が望まれている。一方、創傷治癒や疼痛緩和に頻用される外部デバイスを用いた微弱電流刺激は様々な細胞内シグナル応答に影響を与えることが示唆されている。しかしその詳しい機序やがん細胞への影響は未解明な点が多く、がん治療への応用はなされていない。そこで本研究は微弱電流刺激 (Microcurrent stimulation; MCS)がTNBCに与える影響を解析するとともに、マイクロ電流刺激を用いた新規TNBC治療法の確立を目指した。【方法】担癌モデルマウス作製には5週齢BALB/c雌性ヌードマウスを用い、MCSにはES-530およびPALS Electrodeを用いた。mRNA発現量はリアルタイムRT-PCR法、タンパク発現量はWestern Blotにより測定した。また、アポトーシス細胞数の測定にはFACSを用いた。【結果・考察】ヒト正常乳腺細胞および乳癌細胞株に対してMCSを行い、細胞生存率への影響を評価した。その結果、乳癌細胞株においてのみMCSによって生存率が低下した。この原因を探索したところ、MCSが癌細胞特異的に、細胞内金属イオン濃度の増加に伴うアポトーシスを誘導することが示唆された。また、ヒトTNBC細胞株MDA-MB-231は化学療法に対する抵抗性を有し、特に5-FU感受性が低いことが報告されている。そこでMDA-MB-231に対してMCSを行ったところ、5-FU抵抗性が改善し、通常5-FUが殺細胞効果を示さない濃度においてもアポトーシスを誘導することが明らかになった。さらに、MDA-MB-231を移植した担癌モデルマウスを作製し、MCSと5-FU投与を行った結果、それぞれ単独処置では有意な抗腫瘍効果は認められなかったにもかかわらず、両処置の併用によって極めて高い抗腫瘍効果を示すことが明らかになった。【結論】以上の結果から、MCSがヒトTNBC細胞で癌細胞選択的なアポトーシス誘導効果を有すること、および5-FU感受性を改善し、5-FUの抗腫瘍効果を増強することが明らかとなった。今後、これらの技術を応用し、既存治療に変わる、または既存治療による負担を軽減し得る新たなTNBC治療の創出へと応用したい。</p>

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