胸水貯留・鼠径ヘルニア内転移を契機に発見され,術後に上皮内に病変が限局する卵管癌が原発巣と診断された1例

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  • A case of intraepithelial carcinoma of the fallopian tube diagnosed due to the presence of pleural effusion and metastasis in a patient with inguinal hernia

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抄録

卵管癌は卵管采に腫瘤を形成し,腹膜播種と癌性腹水を伴う進行例が多い.胸水貯留と鼠径ヘルニア内の腹膜転移を契機に診断された卵管上皮内癌の1例を経験したので報告する.症例は76歳,1妊1産,49歳で子宮筋腫のため子宮摘出術を施行されている.主訴は咳嗽,胸水貯留があり精査加療目的で当院紹介となった.全身造影CT検査で右側胸水貯留と右鼠径ヘルニア内に嚢胞状腫瘤を認めた.胸水細胞診で悪性細胞を認め,胸膜の病理診断は漿液性腺癌の疑いであった.骨盤MRI検査で右鼠径ヘルニア嚢胞内に拡散強調像で高信号,造影効果を有する壁在結節を認めた.腹膜癌を疑い,鼠径ヘルニア嚢胞摘出術+両側子宮付属器摘出術を施行した.術後の病理診断では腹膜結節にHigh-grade serous carcinoma(HGSC),右卵管采にSerous tubal intraepithelial carcinomaを認めた.両者は同様の免疫染色像を示しており,卵管癌ⅣA期(FIGO2014)と診断した.腹膜漿液性癌の50%は卵管上皮癌由来とされ,従来原発性腹膜癌と考えられてきたもの中にも卵管原発のものが含まれている可能性が論じられている.近年,HGSCの原発巣決定の基準が提案され,卵管および卵巣の詳細な組織的検索でこれらの臓器に原発巣と考えられる病変を欠く場合のみ腹膜原発と診断することと定義された.今回の症例も,術前の画像検査では子宮付属器に病変は認められず腹膜癌を疑ったが,術後の病理学的診断により卵管に顕微鏡レベルの病変がみられ卵管癌の診断にいたった.

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