心停止後臓器提供事例の分析
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説明
<p>2010年の改正臓器移植法施行以後、臓器提供件数が緩やかに増加したにも関わらず、心停止後臓器提供の件数は減少の一途を辿っているが、本人の意思表示が不明であってもご家族の判断で脳死下臓器提供が可能となったため、脳死下臓器提供に置き換わったことが理由である。</p><p>2017~2021年の5年間に、心停止後臓器提供の承諾が得られた事例は149件であった。149件のうち、3件は心停止後臓器提供の承諾後に脳死とされうる状態となったため、脳死下臓器提供に移行した。残り146件のうち、113件(75.8%)は心停止後に腎臓が摘出され、108件(72.5%)は腎臓移植に至った。</p><p>腎臓摘出に至った113件のうち、61件(40.9%)は一般的な脳死の診断がなされ、41件(27.5%)はカテーテルの挿入が行われた。</p><p>承諾後に腎臓摘出に至らなかった理由は、腎機能不良、急変、全身性活動性感染症(血液培養陽性、敗血症)、司法解剖等犯罪捜査優先、患者状態安定、ウイルス性感染症、悪性腫瘍疑いなどであった。終末期が長期に遷延することによって、無尿やクレアチニン値の上昇などの腎機能不良を来たす事例や、敗血症や血液培養陽性などの全身性活動性感染に至った事例がある一方で、急変により摘出対応が間に合わない事例もあった。また、摘出後に移植に至らなかった理由は、腎臓の灌流不良、腹腔内壊死による腹水汚染、腎臓摘出後の血液培養陽性判明であった。</p><p>心停止後臓器提供は、必ずしも脳死状態を経る必要がないため、潜在的にはより多くの患者が対象となるものの、終末期の長期遷延や急変など対応困難な事例もあるため、慎重な対応が求められる。</p>
収録刊行物
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- 移植
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移植 57 (Supplement), s179_1-s179_1, 2022
一般社団法人 日本移植学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390858153778364032
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- ISSN
- 21880034
- 05787947
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可