腎移植患者に対してHIF-PH阻害薬の効果の検討

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抄録

<p>はじめに: HIF分解酵素阻害薬は、貧血治療に有効性があるだけでなく、虚血再灌流障害において腎保護効果や、末梢動脈疾患への保護効果、LDLコレステロール低下に寄与し、虚血性心疾患に対しても治療効果を発揮する可能性がある。近年、糖尿病性腎症や高齢者の夫婦間など持ち込みの細動脈硬化や末梢循環不全の腎移植が増加傾向にあり、こういった移植患者にはHIF分解酵素阻害薬は夢のような貧血治療薬である。今回、腎移植患者にHIF分解酵素阻害薬を投与し、その安全性と有効性を検討したので報告する。</p><p>対象:当院で移植後フォローしている27人を対象とし,HIF-PH阻害剤と鉄剤を投与し貧血の改善、鉄の代謝、腎生検所見、尿細管障害について検討した。</p><p>G1:腎移植後1年以上経ってから投与した群(n=15  移植後平均15年、平均年齢52歳)</p><p>G2腎移植後早期に投与した群(n=12 移植後0-1ヶ月、平均年齢50歳、PEKT9)</p><p>結果:①HIH-PH阻害薬投与によって速やかに貧血は改善し、(G1;Hb12→13.4、G2:10.6→13.3)その後内服継続するも多血となる症例はいなかった。②エリスロポエチンは、貧血状態では増加するも貧血改善後は定常状態で安定した。TSATはHIH-PH阻害薬投与によって横ばいであった(G1; 30.1→32.3、G2:28.0→21.0)③m-TOR阻害薬投与の有無によって貧血の改善率に違いはなかった。④移植後早期群ではHIH-PH阻害薬投与によって虚血際還流障害の改善が見込まれた。</p><p>結語:HIH-PH阻害薬投与は安全に投与でき、移植後の貧血の改善だけでなく、腎保護作用にも寄与する可能性がある。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s290_1-s290_1, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

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