calpain阻害薬による虚血再灌流肺傷害の抑制効果の検討

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抄録

<p>【はじめに】肺移植医療で,虚血再灌流肺障害は移植肺機能不全の主な原因の一つである.新規細胞死のNecroptosisは肺移植後虚血再灌流傷害に関与し,移植肺機能不全に対する治療の標的になりうると報告がある.近年,細胞内蛋白分解酵素の一つのcalpainの抑制がNecroptosisの改善につながると報告されている.今回,ラット肺移植モデルでcalpain阻害薬(ALLN)による肺移植後虚血再灌流肺傷害の抑制効果を検討した.【方法】雄Lewisラット(体重250-350g)を用い,傷害群と治療群を各々8例ずつに分けた.ドナー肺を臓器保存液(ET-Kyoto液20ml)で灌流し,心肺ブロックとして摘出後に臓器保存液内(20ml)で15時間4℃保存した.その後,分離した左肺をレシピエント側にカフテクニックで移植し,2時間再灌流後に各種解析した.治療群は臓器保存液内にALLN 10mg/kgを,傷害群は溶媒のみを含有した.評価項目は生理学的所見,病理学的所見,タンパク所見,炎症性サイトカイン所見とした.【結果】肺生理学的機能において,治療群は傷害群に比べ,動脈血酸素分圧,及び湿乾重比(肺水腫の指標)が有意に改善し(p=0.0009, p=0.0014),また病理所見で血管外への赤血球,好中球浸潤が治療群で改善していた(p=0.0406, p=0.0313).肺組織のwestern blotと蛍光免疫染色において治療群でnecroptosis経路の抑制を認め,炎症性サイトカイン評価では治療群のIL-1βが傷害群に比べ,有意に改善していた(p=0.0313).【結語】ALLNを臓器保存液に含有させることで,抗necroptosis作用を介して,肺移植後虚血再灌流肺傷害の軽減が示唆された.</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s338_3-s338_3, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

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