胆道閉鎖症生体肝移植術後4年にレシピエント組織由来の胆管癌腹膜播種を生じた一例

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抄録

<p><背景></p><p>臓器移植後の免疫抑制療法は、悪性腫瘍の発生リスクを高めることが知られている。胆道閉鎖症生体肝移植術後4年に、レシピエント由来の胆管癌腹膜播種を生じた症例を経験したので報告する。</p><p><症例></p><p>胆道閉鎖症葛西術後の34歳男性に対し、実妹を生体ドナーとした生体肝移植術施行。移植時の摘出肝にbiliary intraepithelial neoplasm(BilIN)を指摘された。移植後25日にT細胞関連拒絶反応と診断されステロイドパルス療法を行なったが、ステロイド漸減に伴い拒絶反応が再燃し、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン投与し、改善した。</p><p>移植後4年において腸閉塞を生じ、癒着剥離術施行。その後、腸閉塞再燃し、癒着剥離術、小腸部分切除を行なった。小腸の病理検査において、胆管癌腹膜播種による狭窄が指摘された。イレウスチューブによる減圧治療をしたが、移植後4年10か月で死亡した。病理解剖では、腹腔全体の播種結節と、肝門部から突出する腫瘍を認めた。グラフト由来の胆管癌を疑ったが、Y染色体の蛍光in situハイブリダイゼーションにより、レシピエント由来の胆管癌であることが判明した。</p><p><考察></p><p>腹膜播種の原発部位として、胆道閉鎖症葛西術時に遺残した、遠位胆管組織由来の可能性が考えられたが、病理解剖では膵臓と連続する腫瘍は認めなかった。移植時摘出肝において、BilIN病変が指摘されており、これが移植時に播種し、免疫抑制剤により生着、腫瘍へと発展した可能性がある。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s390_3-s390_3, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

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