東日本大震災被災地域の高齢者における住居形態と住環境リスクに関する観察研究:the RIAS Study

DOI Web Site PubMed オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Environmental risks to housing and living arrangements among older survivors of the Great East Japan Earthquake and their relationships with housing type: The RIAS Study
  • ヒガシニホン ダイシンサイ ヒサイ チイキ ノ コウレイシャ ニ オケル ジュウキョ ケイタイ ト ジュウカンキョウ リスク ニ カンスル カンサツ ケンキュウ : the RIAS Study

この論文をさがす

説明

<p>目的 「住まい」は人が最も長く曝露を受ける場である。厚生労働省は地域包括ケアシステムの取り組みの中で,土台としての高齢者のプライバシ—と尊厳が十分に守られた住環境,すなわち騒音やカビ等の「住まい(以下「物理環境」)」,住居状況や社会的支援等の関わりの「住まい方(以下「社会環境」)」の重要性を基本的要素として掲げている。本研究は,災害公営住宅への移転も進んだ2018年度の被災高齢者を対象に,現在の住居形態と「物理環境」「社会環境」の関連を明らかにすることを目的とした。</p><p>方法 2011年度に岩手県沿岸部で実施した大規模コホート研究(RIAS Study)に参加した65歳以上のうち,2018年度調査票の回答者3,856人を対象とした。現在の住居形態に関する設問から住居形態は以下の分類とした:“震災前と同じ(同所再建含)”,“仮設・みなし仮設”,“災害公営住宅”,“新所新築”,“その他”。「物理環境」については,国土交通省が行うスマートウェルネス住宅等推進調査事業における住宅健康チェックリストを用い,「社会環境」については,RIAS調査票より,独居,ソーシャルネットワーク,ソーシャルキャピタルについて評価した。“震災前と同じ(同所再建含)”と比較した他の住居形態と,「物理環境」「社会環境」の各項目の関連を,多変量ロジスティック回帰分析,重回帰分析より検討した。</p><p>結果 最終的な解析対象は3,856人(男性39.1%,平均年齢74.6歳)であった。住居形態と「物理環境」の関連では,震災前と同じ群と比較し,新所新築,災害公営住宅,その他の群で住まいの健康度が高く,仮設・みなし仮設群の健康度が低かった。一方,「社会環境」との関連では,震災前と同じ群と比較し,災害公営住宅群で独居者が有意に多く,災害公営住宅,新所新築群でソーシャルキャピタルが有意に低かった。また,ソーシャルネットワークでは,震災前と同じ群と比較し,災害公営住宅群で有意に低く,サポートの内訳では,災害公営住宅群では家族からのサポート,新所新築群では友人からのサポートが有意に低かった。</p><p>結論 高齢者においては,特に既存コミュニティの有無にかかわらず新たな土地でソ—シャルキャピタルやソーシャルネットワークを築くことが難しいことが示された。地域に出るきっかけづくりを含む,長期的な高齢者支援のあり方について早急な取り組みが求められる。</p>

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ