精神科受療行動からみた青年期にある患者のメンタルヘルスに関する探索的研究

DOI

この論文をさがす

抄録

<p>(緒言)</p><p> 青年期は親からの自立,自己の確立,対人関係や職業の選択などを通して,精神的成長がすすむ年代である.その一方で,挫折や対人関係など揺らぎの多く,精神的問題が顕在化する年代でもある.メンタルヘルス上の問題が多いにも関わらず,精神科専門職者に対して援助を求めない傾向にあるといわれている.本研究では,精神科の病院やクリニックに通院中する青年期の患者に対し,初診時の主訴,受診のきっかけや状況,支援ニーズを調査し,メンタルヘルスを支援するための課題と支援のあり方を検討することを目的とした.</p><p>(研究方法)</p><p>1.調査対象者:関東圏内A県の精神科の病院やクリニックに通院する高校卒業後の18歳から29歳で,主治医の許可が得られた患者を対象とした.</p><p>2.調査方法:主治医から許可が得られた患者で,研究の概要を説明し承諾が得られた者に対し無記名自記式の質問紙調査を実施した.質問紙は外来やクリニックに置いた回収ボックスにて回収した.</p><p>3.調査内容:①基本的属性,②初診時の主訴,受診のきっかけや状況,③受診前後の支援ニーズにつて調査を行った.</p><p>4.分析方法:自由記載を除く,数量的データは記述統計によって算出した.自由記載の支援ニーズは,意味内容ごとにコード化,カテゴリー化を行った.</p><p>(結果)</p><p> 関東圏内4施設,104名の患者(男性32.7%,女性67.3%)から協力が得られた.平均年齢は24.9(±2.9)歳,初診時の年齢は平均20.6(±4.0)歳であった.居住環境は「家族と同居」77名(74.0%),「一人暮らし」15名(14.4%)であり,仕事や学校の状況は「社会人」48名(46.2%),「学生」12名(11.5%),「主婦」6名(5.8%),「休職」6名(5.8%),「休学」4名(3.8%),であった.初診時の主訴は,回答の多かった順に不安76.9%,対人緊張54.8%,意欲低下54.8%で,疾患名は不安障害39.4%,抑うつ障害29.8%,心的外傷・ストレス関連18.3%であった.受診までの期間は「1週間以内」7名(6.7%),「1か月以内」14名(13.5%),「2 ~ 3 か月」24名(24.0%),「3~6か月」23名(22.1%),「6~12か月」8名(7.7%),「1年以上」28名(26.9%)であった.受診のきっかけとなった問題は順に,仕事35.6%,家族関係32.7%,学校の人間関係29.8%であった.初診時の相談相手は母親55.8%という回答が一番多く,父親25.0%,友人17.3%,誰にも相談しなかった16.3%であった.医療機関につながった方法としてはインターネットで見つけたという回答が50.0%で最も多く,次いで学校からの紹介7.7%,相談機関からの紹介6.7%であった.初めて受診することに悩んだか否かについてはほぼ半数で,そのうち受診を悩んだ理由は自分の偏見38.5%,受診を知られたくない36.5%,周囲の偏見34.6%であった.悩まなかった理由は,早く治したかったという回答が67.3%と一番多かった.</p><p> 受診前後の支援ニーズで共通しているのは〈周囲の理解〉〈相談できる場所〉〈職場の環境調整〉〈予防・早期発見できるシステム〉〈精神疾患の理解や知識の普及〉であった.受診前は〈精神疾患に対する知識〉〈制度や支援の情報提供〉〈医療や支援環境の充実〉〈受診しやすい病院環境〉,受診後は〈経済的支援〉〈就労支援〉〈家族への教育支援〉という特徴があった.</p><p>(考察)</p><p> 今回の調査により受診までの期間が1年以上かかったり,誰にも相談しなったという受診者の現状が明らかとなり,早期に必要な支援が受けられるための環境が必要である.医療機関につながった方法としてインターネットが半数であり,青年期の特徴といえるが,一方でいまだ偏見により受診行動が阻まれていることもわかった.インターネットを活用した支援の検討をすること,さらに精神疾患の理解や知識の普及を強化していく必要がある.その際に,両親がキーパーソンになる可能性があり本人のほか,親を対象とした予防や早期発見できるシステムの充実が課題である.受診後には就労支援を望む声もあり,療養中から個別性に応じた支援が必要である.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は,千葉県保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した.(承認番号2017-005)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ