高脂肪食摂取ラットの脂質代謝に及ぼすカプサイシンの影響

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抄録

<p>(緒言)</p><p> 日本での肥満者の増加の背景として,脂肪摂取量の増加により過栄養が大きな要因とされている.生体内において,消費エネルギーに対し摂取エネルギーが過剰になると,余剰分が中性脂肪として体内に貯蔵され肥満になる.肥満はメタボリック症候群の主因子で,この脂質代謝異常を改善するために,唐辛子の辛味成分であるカプサイシン(Capsaicin: CP)に注目した.カプサイシンは,体熱産生亢進や脂質代謝亢進などの生理活性を有しており,肥満予防や酸化ストレスの軽減ができる食品と期待されている.今回,高脂肪食を摂取したラットにおいてCPが,脂肪蓄積量,血清および肝臓脂質濃度などに及ぼす影響を調べることを目的とした.</p><p>(研究方法)</p><p> Sprague-Dawley系雄ラット5週齢を購入し,各群6匹ずつに分け実験飼料で3週間飼育した.実験飼料はAIN-93組成に準じて,油脂区分は対照(Control: C)10%,実験群30%で高脂肪食(High Fat diet: HF)とし,各々の一方に0.3% CP(カプサイシン濃度として0.45mg%)を添加し,油脂はラードを用いた.すなわち,C群,CP群,HF群,HF+CP群の4グループとした.飼料と水は自由摂取とした.カプサイシンは,㈱大津屋商店のカイエンペッパー(原材料名:唐辛子)を購入し,一般財団法人日本分析センターにて,高速液体クロマトグラフ法を用いてカプサイシン量を測定したものを用いた.CPとして,0.15g/100g含有するものを使用した.実験投与終了後,終体量,総飼料摂取量,肝臓重量,後腹壁脂肪重量,睾丸周辺脂肪重量,血清脂質濃度,インスリン,グルカゴン,抗酸化力などの測定を行った.また,肝臓脂質濃度は,クロロホルム:メタノール(2:1)溶液で抽出後,減圧乾固して酵素法キットにより測定を行った.</p><p> データは,平均±標準誤差で表した.統計処理には,PASW Statistics 20(日本IBM㈱)を用い,一元配置分散分析および多重比較(TukeyあるいはDunnettT3)を行った.検定の結果は,危険率5%および1%未満を有意と判定した</p><p>(結果)</p><p> 総飼料摂取量は,C群とCP群よりHF+CP群で有意(p<0.01)に低値を示した.終体重は,C群とCP群よりHF群で有意(p<0.01)に高値を示した.肝臓重量は,C群,HF群,HF+CP群よりCP群で有意(p<0.05)に低値を示した.後腹壁脂肪及び睾丸周辺脂肪重量は,C群よりCP群で有意(p<0.05)に低値,HF群よりHF+CP群で有意(p<0.05)に低値を示した.血清トリグリセリド濃度はC群よりHF+CP群で有意(p<0.05)に低値を示し,肝臓トリグリセリド濃度はC群よりHF群とHF+CP群で有意(p<0.01)に高値を示した.血清及び肝臓のコレステロール濃度は群間における差はなかった.インスリン濃度はC群よりHF+CP群で有意(p<0.05)に低値,C群よりHF群で低値を示す傾向にあった.グルカゴン濃度は,CP群よりHF群とHF+CP群で高値を示す傾向にあった.抗酸化力は,HF群よりHF+CP群で有意(p<0.05)に高値を示した.</p><p> (考察)</p><p> 高脂肪食にカプサイシンを摂取した際,体脂肪の分解が促進し,脂肪蓄積低下が明らかとなり,肥満の予防に役立つことが示唆された.血清トリグリセリド濃度はC群よりHF+CP群で低値となり,脂質異常症の予防に有用と考える.グルカゴン濃度がCP群よりHF群とHF+CP群で高値を示す傾向にあったのは,脂肪組織のトリグリセリドを分解し,過剰に入ってくるエネルギーを消費したと考える.抗酸化力がHF群よりHF+CP群で高値となり,酸化ストレスの緩和に役立つことが期待される.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は,千葉県立保健医療大学実験指針に基づき,「動物実験研究倫理審査部会」の承認(2019-A06)を得て行った.</p><p>(利益相反)</p><p> 本研究に関して,開示すべきCOIはない</p>

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