タイ人日本語話者による普通体の使用実態と文脈

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  • ビジネス会話における部下役の発話に焦点を当てて

抄録

<p>本研究では、ビジネス会話における普通体の使用実態を把握するために、上下関係を持つ社内会話において、部下役のタイ人による普通体の使用を課題として扱い、普通体の使用文脈と効果の特徴を解明することが目的である。</p><p>本研究の調査では、タイ人日本語話者(以下、TNS)と社会人の母語話者(以下、JNS)を対象にし、ロールプレイによる会話データを収集した。両者は日系企業に就職している社会人であり、TNSは上級日本語話者である。会話データは、社内の打ち合わせという場面設定であり、TNSが部下、JNSが上司という役割で会話したものである。丁寧体が基本スタイルとして使われた部下役の発話データの中で、本研究では部下役のTNSの発話における普通体の使用を分析対象とした。分析観点に関しては、普通体の使用を文脈別に分析した上で、普通体の効果を考察した。</p><p>分析結果は以下の2点に集約される。1点目、普通体の使用を文脈別に検討した結果、言語的文脈と心理的文脈において普通体の使用が見られたが、言語的文脈における使用が圧倒的に多かったことがわかった。言語的文脈の中で、<内容追加・例挙>、<質問・答え>、<繰り返し・引用>の順に普通体の使用数が上位である。また、新しい話題の導入を含む<話題展開>の文脈において普通体の使用が確認された。<話題展開>における普通体の使用は、先行研究で母語話者による使用に見られなかったため、TNSによる普通体の使用の特徴だと窺える。2点目、普通体の使用による効果を考察すると、言語的文脈における普通体の使用は情報のやり取りのため、情報への焦点という効果が見られた。そして、言語的文脈における普通体が笑いを伴って使用される場合は、ビジネス場面という改まった文脈から一旦逸脱する効果があると考察された。心理的文脈の場合は、相手と同調する際に普通体を用いたことから、共感を示す効果が読み取れた。</p><p>以上、本研究で普通体の使用実態について明らかにしたことを活かして、TNSによる普通体の特徴を日本語教育現場に反映させ、普通体に関して学習者の理解を促進することが望まれる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858608254565120
  • DOI
    10.32252/tcg.20.0_131
  • ISSN
    24344680
    13488481
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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