メッシュサイズとデータソースの異なるDEMの地形解析特性について

書誌事項

タイトル別名
  • Topographic analysis characteristics of DEM with different mesh sizes and data sources

説明

<p>DEM(数値標高モデル)は、地形図の等高線、写真測量、航空レーザ測量など様々なデータから作成されており、データソースによってその精度や解像度が異なる。Iwahashi and Pike (2007) では、斜面傾斜・尾根谷密度・凸部の密度分布を用いた地形解析手法を提案している。小荒井ほか(2011)では、中国山地の道後山を対象にこれらの地形量を用いた地形解析を行い、DEMの解像度によって抽出される地形量の値が異なること、解像度の粗い50mDEMで抽出される尾根谷密度と地質が関連することを明らかにしたが、それらの詳細や原因については解明できていない。本発表では、特に尾根谷密度に着目して、DEMの解像度とデータソースの違いが、解析する地形量にどう影響するのかについて検討した結果を紹介する。</p><p>小荒井ほか(2011)で解析された道後山に特徴的な地質として蛇紋岩があるため、山地の研究対象地域については蛇紋岩に着目して選定し、道後山・至仏山・早池峰山で地形解析を行った。平野については、利根川や荒川の流域で自然堤防や河畔砂丘が発達する埼玉県北東部で地形解析を行った。 航空レーザデータから作られた5mDEMを10m・30m・50mDEMに、等高線から作られた10mDEMを30m・50mDEMに間引き、解像度とデータソースの違いを尾根谷密度について比較した。尾根谷密度の抽出方法は、ArcGISで3×3セルのメディアンフィルタを用いて抽出した半径10セル内の凹凸(メディアンフィルタをかけたDEMデータと元のDEMデータの差)の数を半径10セルの全メッシュ数314で割ったもので、値は0から1の間になる。それぞれのDEMの尾根谷密度のヒストグラムを作成して特徴を検討したほか、尾根谷密度分布を地質図や土地条件図と重ね合わせて、地形・地質と尾根谷密度の関係について検討した。 </p><p>山地での地形解析結果では、尾根谷密度の数値は、等高線DEMの方が航空レーザDEMよりも小さい傾向が認められた。また、解像度が粗くなるほど、尾根谷密度の数値が大きくなっている。それぞれのDEMの尾根谷密度の平均値を閾値にして粗い・滑らかを区部して分布図を作成したところ、どの解像度でも分布特性は等高線DEMと航空レーザDEMとでよく似た分布であった。そのため、尾根谷密度の数値は違うものの、粗いか滑らかかという地形的特徴はどちらのデータソースも良く捉えているという結果であった。 また3地域とも蛇紋岩の地質では滑らかな地形であり、メッシュサイズが大きいほどその特徴を捉えていた。航空レーザの5mDEMの場合に、蛇紋岩地質のエリアでも尾根谷密度の数値が大きな箇所が多数認められた。至仏山において現地調査を行なったところ、尾根谷密度が高い箇所は稜線部の岩稜帯であったり、局所的に大岩が存在したりしており、等高線では表現できない起伏を航空レーザが捉えた結果であると考えられる。航空レーザDEMもメッシュサイズを粗くすると等高線DEMと尾根谷密度の特徴が似てくるのは、細かな起伏が除去されて全体的な地形的特徴を捉えるようになるからであろう。</p><p>平野での地形解析結果では、尾根谷密度の数値は、等高線DEMの方が航空レーザDEMよりも小さい傾向が認められた。また、解像度が粗くなるほど、尾根谷密度の数値が大きくなっている。これらの特徴は山地の解析結果と同様であるが、航空レーザDEMの尾根谷密度の数値が大きくなっているのが山地に無い特徴で、地形が粗い・滑らかの空間分布も等高線DEMと航空レーザDEMとで明らかに異なっている。これは、等高線と航空レーザとで捉えている特徴が全く違うことを意味している。 等高線DEMでは尾根谷密度の数値は山地と比べて明らかに小さく、全体に滑らかな地形を捉えている。相対的に尾根谷密度の高い地形は、台地の縁辺部や台地を刻む谷、自然堤防の中央部などである。一方、航空レーザDEMは平野部であっても尾根谷密度の数値が山地よりも大きく、特に谷底平野・氾濫平野の地形区分の数値が大きい。航空レーザが畦畔や水路などの平野部の人工的な局所的起伏を捉えており、5mDEMではそれが顕著で、メッシュサイズを大きくしてもその影響の残っているものと考えられる。埼玉県北東部で現地調査した結果でも、尾根谷密度が大きな箇所では、水路などの人工構造物が存在し、梨園などの特異な土地利用がなされていた。また、利根川右岸・左岸とで全く違う尾根谷密度の数値を示しており、航空レーザの計測時期の違いや測量実施機関のデータ作成手法の違いの影響なども示唆される。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619525979776
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_102
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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