1970年代後半の東京におけるゲイビジネスの空間的分化

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  • The spatial differentiation of gay businesses in Tokyo in the late 1970s

抄録

<p>1. 問題の所在</p><p> 日本におけるゲイ(男性同性愛者)ビジネスの集積地区に関する都市研究は,東京都新宿区に位置する新宿二丁目地区を中心として議論している(例えば,砂川2015, 須崎2019).それゆえ,他のゲイビジネス集積地に関する先行研究はほとんどみられない.ただし,数少ない研究として,鹿野(2018)は大阪市のゲイバー集積地区を取り上げ,地区ごとにゲイバーの顧客の年齢層が異なることを指摘している.鹿野(2018)の指摘は,ゲイバーという同一の業種における差異が都市空間に反映されることを意味する.そこで,本報告では,1970年代後半の東京におけるゲイビジネスの分布を把握し,顧客の年齢層という視点から東京におけるゲイビジネスの空間分化の有無について検討する.</p><p>2. 研究方法</p><p> ゲイビジネスの住所を特定するため『全国プレイゾーンマップ1978年版』を用いた.前者の資料にはゲイバーやショップなどの店名,電話番号,客層の年代などの情報に加え,一部の店舗では住所が公開されている.また,ゲイビジネスが集積する地域では,店舗の住所が非公開の場合でも入居するビルや目印となる施設が地図で示されている.そのような店舗については『ゼンリン住宅地図』と照合して住所を特定した.</p><p> 次に,『全国プレイゾーンマップ1978年版』において客層の年代について記載のあったゲイバー95店舗を「若年向け」,「中年向け」,「年配向け」,「若年・中年向け」,「若年・年配向け」,「中年・年配向け」「若年・中年・年配向け」に分類した.そして,店名,住所,客の年代を紐づけたデータベースを作成し,GISツールを用いて地図化した.</p><p>3. ゲイビジネスの分布</p><p> 1978年においてゲイビジネスが複数分布する地域は,大井町(3店舗),渋谷(4店舗),新橋(9店舗),池袋(25店舗),上野・浅草(96店舗),新宿(156店舗)である.新宿地域におけるゲイビジネス店舗数は他地域と比べて突出して多く,池袋地域や上野・浅草地域も一定程度の集積がみられる.これらの三つの地域において,ゲイビジネスは点在しているのではなく,池袋駅周辺地区,上野駅・浅草駅周辺地区,新宿二丁目地区に集積している.これらの地区では,交通の結節点となる駅が存在しており,人の往来も多いことから匿名性を確保できると考えられる,</p><p>4. ゲイビジネスの空間分化</p><p> ゲイビジネスの顧客の中心は若年層である.しかし,上野駅・浅草駅周辺地区では,ゲイビジネスの顧客において「若年」の割合が他地区と比較して低く,反対に「年配」の割合が突出して高い.池袋駅周辺地区と新宿二丁目地区ではどちらも顧客の年代が若いほど割合が高くなっているが,前者は三つの地区の中で「中年」の割合が最も高く,後者は最も低い.三つの地区を相対的に比較すれば,上野駅・浅草駅周辺地区には年配向け,池袋駅周辺地区には若年から中年向け,新宿二丁目地区には若年向けのゲイビジネスが集積している.</p><p>5. 小括</p><p> 本研究の結果から,1978年の東京において,ゲイビジネスは新宿二丁目地区だけでなく池袋駅周辺地区および上野・浅草駅周辺地区での集積が確認された.また,それぞれの地区におけるゲイビジネスは顧客の年齢層によって空間的に分化していた.分化の要因については今後の課題とする.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619526028160
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_188
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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