北京旧城におけるアーバン・リニューアルの現状と土地利用・所有形態の変化

DOI
  • 何 晨
    茨城キリスト教大学(非)

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タイトル別名
  • Current status of urban renewal and the changes in land use and ownership form in Beijing old city

抄録

<p>1. 研究の背景 </p><p> 本研究では,アーバン・リニューアルが進む北京旧城の外交部街胡同注1)を事例に,土地利用および住宅の所有形態の変化を考察する。中国の都市政策は,計画経済の下で都心に工場や工場労働者向け住宅が混然と建設された1949年から1980年代[いわゆる単位(タンウェイ)制・工人新村時期],および改革開放政策が進み市場原理のもとでアーバン・リニューアルが進む1990年以降に区分される(潘2021)。単位とは中国の基本的な社会組織であり,職場(国営企業)や従業員向け住居(公房),娯楽施設,病院,学校などから構成されていた。これらの施設はいずれも単位が所有・管理し,中国国民は原則としていずれかの単位に所属していた(王2020)。一方,1949年以前からの旧住民の私有住宅や,土地所有権の有償譲渡の認可された1980年代以降に購入された住宅は,私房(土地使用権の賃貸や売買が許可された住宅)と呼ばれる。 </p><p> 北京旧城の場合,1990年代以降のアーバン・リニューアルは,以下のように整理できる。①1990年代[老朽化著しい四合院や大雑院注2)の大規模な取り壊し],②2000年代初頭[歴史文化保護区における胡同の改修・保全],③2015年以降[老朽化した公房住民の転出,私房を購入した富裕層の流入など]。 </p><p> 北京旧城の住宅は,直管公房(北京市が管理する公房),単位自管公房(単位が所有・管理する公房),および私房から構成される。直轄公房の多くは大雑院である。1990年代にはじまるアーバン・リニューアルにより,北京旧城の土地利用や建物の所有形態は大きく変化した。北京市東城区を事例に住民構成の変化を調査した何(2022)は,2015年以降,高額の立ち退き料などを得た旧住民の郊外転居が相次いでいるほか,仕事を求める若い地方出身者や富裕層の北京旧城への流入が増えていることを指摘している。 かつての北京旧城内には,行政機関,工場,商業施設など(職場=単位)が配置され,周囲には職住近接型の居住地域(主に大雑院)が設けられていた。また,各単位は囲壁で区切られており,中国独自の都市空間が形成されていた(王2020)。しかし近年,アーバン・リニューアルが進むなかで,北京旧城の土地利用や施設の所有形態は大きく変化している。しかし,こうした変化を検討した先行研究はわずかである。 </p><p>2. 研究方法</p><p> 北京市中心部に位置する東城区外交部街胡同(全長741m)を事例に,1990年代から今日までの土地利用の変化,および建物の所有形態の変化を調査する。調査方法は,行政資料の収集および現地住民たちへの聞き取り調査である。</p><p>3. 調査結果 </p><p> 調査の結果,外交部街胡同の土地利用は1990年以降大きく変化していることが確認された。また,現在北京市政府は,直管公房の住民の立ち退きを積極的に進めている。公房の跡地利用計画は公表されていないが,土地利用はこれからも大規模に変化すると予想される。 注1)胡同とは,北京の伝統建築である四合院が連なって形成された横丁を意味する。 注2)大雑院とは,老朽化した四合院を改築して部屋を分割し,部屋ごとに異なる家族が暮らしている住居形態である。 </p><p>[参考文献] </p><p>王天天2020.転換期中国における都市空間の形成・再編と郊外住宅地の発展.地学雑誌129(1):1-19. </p><p>潘藝心2021.中国年における内城/インナーシティとその変容-江蘇省無錫市を事例として―.地域と環境 16:31-60. </p><p>何晨2022.北京旧城におけるアーバン・リニューアルの現状と住民構成の変化.日本地理学会2022年春季学術大会発表要旨集.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619526113664
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_270
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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