考古遺跡を景観としてとらえる意味

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タイトル別名
  • Understanding archaeological site from a landscape perspective
  • -Consideration on the Antequera Dolmens site, Spain-
  • -スペイン・アンテケラのドルメン遺跡に関する考察-

説明

<p>1.文化遺産と景観</p><p> ユネスコ世界遺産や日本の文化財保護法において「文化的景観」の概念が導入されているように,近年文化遺産の保護やマネジメントにおける景観への関心は高まっている。文化政策による景観へのアプローチとしては,文化的景観のように景観そのものに遺産的価値を見出す場合と,史跡・遺跡などの文化遺産を景観という視点から(再)解釈する場合の大きく二つが挙げられるだろう。本研究では,後者の事例としてスペイン・アンダルシア自治州におけるアンテケラのドルメン遺跡を取り上げ,同自治州の文化政策における景観の考え方を把握するとともに,文化遺産のマネジメントにかかわる政策実践の例を通じて,考古遺跡を景観としてみることの意味について考察する。</p><p>2.文化遺産としてのアンテケラのドルメン遺跡</p><p> アンダルシア自治州の文化政策は,景観を直接的な保護対象とはしないものの,「アンダルシア歴史遺産法」が定める既存の文化財カテゴリを援用しながら間接的な介入を行っている(竹中,2021)。メンガ,ヴィエラ,エル・ロメラルの3つの巨石建造物からなるアンテケラのドルメン遺跡は,先の歴史遺産法が定める文化財カテゴリのうち,考古学ゾーン(Zonas Arqueológicas)として登録されている。登録の根拠として,歴史的・考古学的価値とともに強調されているのが,この遺跡の有する景観的価値である。近年の考古学的調査研究によって,ドルメンの立地や方向性が周囲を流れる河川やそびえたつ岩山など,自然の事物との関係性において定められていることが明らかになっている。このドルメン群を遺跡単体としてではなく,「ゾーン」として認定したのは,これらの巨石建造物を周辺の地理的環境と関連づけながら,アンテケラの巨石景観(paisaje megalítico)としてまとまりをなす空間的領域の中に位置づけることで,遺産としての意味や価値をより深く理解することが可能になるためである。2016年の世界遺産登録のさいにも,独特な方向設定を有するドルメンと地上の自然物との関係性は,この遺産の「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」として高く評価された。</p><p>3. 現在のアンテケラの景観要素としての考古遺跡</p><p>アンテケラのドルメン遺跡は,過去に存在しえた景観を解釈する上でのみならず,現在のアンテケラの景観を成り立たせ,より豊かにするという意味でも重要な要素をなしている。ドルメンと周辺環境との関係性をこの遺跡最大の価値ととらえる州文化省は,その関係性を景観として可視化するため,様々な政策的介入を行ってきた。メンガ遺跡と「恋人たちの岩山」の見通しを確保するためのマツの伐採,ミュージアムの修景,都市計画における用途地域の変更などがその例である。また,ドルメン遺跡のもつ視覚的・象徴的な意味を現代の人々に体感してもらおうと,2019年夏より野外イベント「Menga Stone」を開催している。こうした場は,地域アイデンティティとしての景観をアンテケラの人々が再認識する貴重な機会となっている。</p><p></p><p>文献</p><p>竹中克行 2021.ランドスケープの価値づけ—欧州ランドスケープ条約に関わる政策実践を中心に―.経済地理学年報,67-4,pp.255-274.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619526135168
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_60
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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