高知県,加奈木のつえの初生年代:天然ダム堆積物の<sup>14</sup>C年代に基づいて

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  • Primary age of the Kanagi Landslide, Kochi Prefecture, southwest Japan, based on 14C ages of a dammed sedimentts

抄録

<p>1.はじめに四国南東部,高知県室戸市の佐喜浜川上流部には,「加奈木のつえ(加奈木崩れ)」と呼ばれる大規模な深層崩壊地(崩壊型地すべり)が分布する.加奈木のつえの発生時期と誘因は,1707年(宝永4年)の宝永地震というのが通説であるが(千木良ほか,1998など),それらは100年以上後の古文書に依存している.植木(2020)は,崩壊堆積物が渓流をせき止めた場所で長さ5.5 mのボーリング掘削を行い,コアから複数の14C年代を得た.そして,加奈木のつえの初生年代は,通説のように江戸期後期ではなく,後期更新世に遡るとした.今回,その近傍で長さ21.2 mのボーリング掘削を行い,天然ダム堆積物を採取した.以下に,そのコアの層相を記載し,天然ダム堆積物の14C年代から,加奈木のつえの初生年代を決定する.2.ボーリングコアの層相と年代 コアは,深度0〜0.23 mの土壌(A層),深度0.23〜9.49 mの渓流の堆積物(B層),深度9.49〜17.70 mの天然ダム堆積物(C層),深度17.70〜19.58 mの渓流の堆積物(D層),深度19.58〜21.20 mの基盤の砂岩(E層)の5層からなる. C層の深度10.33〜10.36 mのシルトから17,500±60年前,深度13.41 mの植物片から150±20年前,深度15.42〜15.65 mのシルトから18,110±60年前,深度17.63 mの土壌塊から710±20年前の14C年代が得られた.3.天然ダム堆積物の年代と加奈木のつえの初生年代 C層からの4つの14C年代のうち,深度13.41 mと深度17.63 mの年代は,それぞれ掘削時に地表付近の植物遺体と土壌が落ち込んだことによると思われる.一方,深度10.33〜10.36 mと深度15.42〜15.65 mの年代は層序は整合的であり,有意であると考えられる.植木(2020)によって,B層の上半部から9,230〜21,720年前の3つの14C年代が得られているが,2つの年代はC層の年代よりも新しく,層序と整合的である.これらから,天然ダム堆積物は約1.8万年前の後期更新世に600年程度で堆積したと考えられる.したがって, 加奈木のつえの初生年代は通説のような江戸時代後期ではなく,後期更新世に遡ることが分かった.引用文献:千木良ほか(1998)日本応用地質学会平成10年度研究発表会講演論文集,61-64.植木(2020)日本地理学会発表要旨集,2020a (0),49.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619526141184
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_90
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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